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人類種の天敵が一年戦争に介入しました
第10話
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与することなどない。現場を部下に任せるしかない以上、マ・クベの立場は確かな人物鑑定眼なくして務まるものではない。
 そのマ・クベの眼から見て、野良犬は間違いなく事実を話している。情報そのものの正誤はともかく、野良犬自身の言葉に裏も含みもない。

 目の前にいる樽は、途方もない化け物なのだ。

 ひどい目眩と吐き気に襲われたマ・クベだったが、どうにか醜態は晒さずにすんだ。総司令部の司令官室で聞いていたら卒倒したかもしれないが、モビルスーツに乗って部下に囲まれているという状況が、マ・クベの現実逃避を許さなかったのである。

「……野良犬、話はここまでにしよう。敵が近いようだ。我々は言う通りに高みの見物とさせてもらう。任せて良いのだな?」
「そんな大事じゃないって。すぐ終わるよ」
「……わかった。全機、移動を再開する。北に4キロメートルほど移動して、地形に沿って機体を隠せ。現地での詳細な配置は01に任せる」
「閣下!」
「司令!」

 戦闘の見える位置に残るというマ・クベの決定に部下達が一斉に騒ぐが、腹を括ったマ・クベを翻意させることはできなかった。

「私は奴を見るためにここに来たのだ。手ぶらで帰ることは許されんのだよ」
「戦いぶりを見るだけなら観測要員で充分です。閣下が不要な危険を冒す理由にはなりません!」
「犬を使うなら、犬になつかれなくてはならん。飼い主への信頼は必要不可欠だぞ」

――首輪の着けようもない狂犬なら尚更な。

 マ・クベはヘルメットの奥で末尾の一言を呑み込んだ。


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