暁 〜小説投稿サイト〜
緑の楽園
第一章
第4話 一日目の終わり
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ないだろうか?

 こちらに積んである手ぬぐいを重ねて、下に敷いてあげることもできる。
 そのほうが良いのかどうか。言うか言うまいか迷った。

 言葉が通じるようになってしまったせいで、以前よりも気を遣わないといけない感じはあるのだが。
 どこまで構えばよいのかという線引きがイマイチわからない。難しい。

「……クロ」
「なんだ」

 起きていた。
 いや、もしかして起こしてしまったのだろうか? もしそうなら余計なことをしてしまったかもしれない。

「そこ、下が硬いんじゃないのか。何か敷こうか?」
「大丈夫だ」
「そうか。もしも今ので起こしてしまったのなら悪かったな」
「気にしているのか」
「まあね」
「顎を付けているときは深く寝てはいない。気にする必要はない」

 驚いた。少し長めのコメントが来た。
 おそらく今までで最長だと思う。

 ――これはひょっとして。

 毎日会話を重ねていけば、もっと複雑な話も出来るようになったり?
 今は中途半端にしか会話できないレベルなので、正直少し疲れる。もっと円滑に会話できるようになれば、こちらも楽だ。

 頭の中にそんな考えを巡らせていると、そのクロがピンと耳を立てた。

「あの人間が来た」
「ん? あの人間? ああ、カイルかな?」

 食器を回収しに来たようだ。
 俺には足音なんて全然聞こえなかった。凄い聴力だ。さすが犬。



「…………」

「メシうまかったぞ。ごちそうさま」
「わっ! 何だ、兄ちゃん起きてたのか」

「ああ。全然眠くならないんでな」
「そうなの? 調子が悪くて眠れないとかじゃないんだね?」
「大丈夫だよ。心配してくれてどうも」
「へへへ」

 暗さに目が慣れたので、わかる。彼は上が半袖の服、下はダボダボのハーフパンツ。かなりラフな格好をしていた。夜警の当番交代から、着替えてこちらに来たという感じだ。
 さすがにもう女医は寝ていると思うが、彼は合い鍵も持っていたのだろう。

「お前、孤児院の職員だったのか」
「そうだけど。何で知ってるの? お医者さんから聞いたの?」
「ああ。十三歳で働いているとはな。ビックリだ」

「別に十代で働くのはおかしな話じゃないと思うよ? まあ、オレは他の人よりちょっと早めなのかもしれないけどさ。何か仕事しないとメシ食えないし困るじゃん。あ、兄ちゃんは宇宙人だからこっちとは違うのかな?」
「だから宇宙人じゃないっての」

「冗談冗談。兄ちゃんの国では何歳から働くのが普通なの?」
「うーん。二十二歳とか二十三歳から働き始める人が多いんじゃないかな。俺は二十二歳でまだ働いてない」

 少年が驚きの表情を見せた。

「え? そんなに遅いんだ。兄ちゃん
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ