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銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
帰還の後に
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時間がかかり、事前に察知していなければ不可能です」

「ならば、ただ敵が読んでいただけではないのか。並行追撃を考えたのであれば、その対策―−つまり我々が味方殺しもすることも考慮に入れると思うがね」
「それでも……です。わかっていてもできないことがある。エーレンベルク元帥はフルスピードで走る車で、混雑する道路を駆け抜けられますか。ブレーキもなしに」
 エーレンベルクは、顔を引きつらせて、頷いた。

「なるほど、な。並行追撃をかける戦略を持ち、要塞砲を回避するだけの命知らずの度胸と技術があることは理解できた。だが、気になるのは、今後の対策だ」
「正直なところ、今回の敵の作戦は予想をしていなかったことです。今後は密集だけではなく、要点で分散させる必要もあるでしょう」
「よく検討してくれ。一度ならば知らなかったで、済むだろうが、二度目はない」

「は」
 短い返答の言葉に、エーレンベルクは小さく首を振った。
 これ以上厄介な話は聞きたくもなかったし、さらに言えば相談すべき案件はまだ多くあったからだ。
「今後はイゼルローン要塞の人事をどうするかだ」
「クライストとヴァルテンベルクの後釜ですな」

 シュタインホフが納得したように頷いた。
 イゼルローン要塞の破壊を許し、あまつさえ味方殺しまでする者たちを残しておくわけにもいかない。特にクライストは、子弟をなくした有力貴族の矛先になってもらわなければならなかった。
 二人とも良くて降格の上、退役――あるいは、死罪であろう。
 その辺りはリヒテンラーデ候と――それを伝える陛下次第であるが。
「手ごろな中将はいますかね」

 シュタインホフとエーレンベルクは、艦隊司令官の名前を考えていく。
 イゼルローン要塞司令官と駐留艦隊司令官は、それぞれが大将の階級だ。
 だが、イゼルローンは辺境の先といっても良い場所であり、現役の大将を向かわせるにしてはあまりにも辺境――つまり、首都で一部隊の長となっている者たちにとっては、辺境のしかも、最前線の戦場は左遷といってもいい不人気な職場だ。

 大将の階級には有力貴族も多くいるため、おいそれと異動させることもできない。
 必然的に、有力な艦隊司令官が階級をあげて、転属させることが多かった。
「それですが。ヴァルテンベルク大将を残すことはできないでしょうか」
「何を言っている。敗戦の責はとるべきであろう」
「で、あればクライスト大将に――要塞司令部に取ってもらえばよいかと。今回の報告を見ましたが、並行追撃によって一時的には食い込まれましたが、敵の数に対して奮戦は認められるべきであると」

 エーレンベルクの瞳が、ミュッケンベルガーの表情を伺うように、細くなった。
「卿は何を考えている?」
「仮に――要塞司令部に責任を押し付け
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