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111部分:イドゥンの杯その十七
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イドゥンの杯その十七

「何処かにいる」
「問題はその何処かですが」
「思えば妙な話だ」
 トリスタンはここで呟いた。
「本拠地がわからないというのもな」
「ニーベルング自身その素性は謎の部分が多いですし」
「そうだな」
 元帝国宇宙軍総司令官であることはわかっている。だがそれ以外の素性は不明となっているのである。
 細かい経歴も出自もだ。帝国にいた頃は不思議と話題にはならなかった。そして今も。様々な憶測が彼を包み、それがさらに彼を謎の存在にしていたのである。
「何者なのだろうかな」
「さて」
 部下達にもそれはわからなかった。おそらく知っているのはクリングゾル自身だけであるようにすら思えるものであった。彼に関してはそこまで何もかもが不明なのであった。
「それがわかれば大きいでしょうが」
「うむ」
「何もわかりません」
「だがクンドリーに会えばそれがわかるかもな」
「クンドリーにですか」
「そうだ。彼女がニーベルングにファフナーを作らせたのだとすれば」
「彼女はニーベルングの側にいる存在」
「ならば。多くのことも知っているだろう」
「それも考えておられるのですね」
「そうだ。その為にも会いたい」
 彼は言った。
「彼女にな。何がわかるか」
「危険を冒す価値はあると」
「虎穴に入らずば虎子を得ずだったか」
「ええ、確か」
「古い諺にあったな。今がその時だ」
 彼はラートボートに向かう。遂にそこから僅かの場所にまで達していた。
「ラートボートが見えました」
「うむ」
 部下達の言葉に頷く。周りには敵影一つない。
「敵艦隊は」
「ブラバント提督の軍に敗れました」
「そしてブラバント提督もまたラートボートに兵を降下させているそうです」
「そうか、彼もか」
 トリスタンはそれを聞いて声で応えた。
「今のところ惑星においての戦闘は見られません」
「帝国軍はもういないのか?」
「そこまではわかりませんが。ただ戦力はかなり落ちているようです」
「そうか」
「どうされますか?」
「決まっている。兵を降下させる」
 彼は迷うことなく降下を命じた。
「そしてクンドリーに会う。よいな」
「ですが問題は」
 まだあそれはあった。部下の一人モルが言う。
「クンドリーは。何処にいるのでしょうか」
「それだな」
 トリスタンにとってもそれが問題であった。顎に手を当てて考え込む。だがそれはすぐに解決されたのであった。
「ようこそ、ラートボートまで」
 モニターにクンドリーが姿を現わしたのであった。
「卿か」
「はい。必ず来て下さると思っていました」
 モニターに映るクンドリーの姿は気品があり、艶やかなものであった。黒く長いドレスの様な服を着ていた。そしてその黄金色の目でトリスタ
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