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シベリアンハイキング
タルクセナート
文明からの使者
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馬に乗った集団がドミトリーの陣営に入る。その中の一人が馬上から辺りを見回す。政府の人間と思われるその男はドミトリー以下、彼の覆面の部下をも合わせて注視していた。いや、半分蔑む様な眼差しだったかも知れない。男は上等なジャケットを羽織り、鼻の下に髭を蓄えていた。そこだけ見れば、紳士の格好、少なくとも少し前の貴族階級の出で立ちなのだが、それも全ては威厳の為であろうことは、ユスフもドミトリーも直ぐに理解できた。明らかに自分たちより若い人間が、無理をして年を上に見せようとする努力。これ程見え透いた物もそうそう無い。男は明らかにユスフより年下であった。しかし、今は向こうの方が立場では上である。

「まったく。こんな山奥で何でこんな奴らを相手にしなきゃならならんのか。あー。おい、タタール人!準備は出来たか?」

男は馬上からドミトリーに言いつける。

「勿論、言いつけられた通りの爆薬は揃えた。」

「ふん。一応言われたことは出来るのか。いや、野蛮人連中
のことだ。火薬の中に湿気た出来損ないが混ざってるかも知れん。念のため後で見せろ。・・・でぇ、南から一人男が来てる筈だが・・・それが、お前か。」

男はユスフの方を見ると、馬を降りて近づいてきた。側に来るなりその視線を、ユスフの足元から上に向かってゆっくりと動かす。それは取り調べの時に憲兵が容疑者相手に最初にやる視線の動きに近かった。その冷たい視線で相手を萎縮させ、やり取りの主導権をこちらに持ってくる。そんな意味合いもある。恐らくこの男もそれまでそうやってきたのだろう。しかし、当のユスフは全く動じることもなく茶を啜っている。これが男にとっては面白く無い。

「ふんっ。」

男はユスフを睨むのを止めた。ドミトリーが話を進める。

「早速だが、我々は何をすべきか?」

「明日、一つ橋を壊して貰おうか。」

「橋?」

「明朝。この近くの渓谷に架かった橋を汽車が通る。通るところで橋を爆破だ。それ位なら貴様らでも出来るだろう。」

つまり、列車強盗をしろということなのだ。が、目的が解らない。ドミトリーが続けて聞く。

「やることは承知した。しかしながら目的をもう少し・・・その詳しく教えて頂けないか。」

「ふん。お前ら野蛮人はそんなこと知らなくて良い。とにかく、橋を落とせ。それで大方乗ってる連中は死ぬだろ。それで良い。橋と汽車を落とした後、それでも生きてる奴が居ないかをそこの男に見に行かせる。」

そう言って、お前がやれという素振りで、男はユスフに向かって顎を突き出した。ここまでで判るのはどうも党政府として消しておきたい人間が明日汽車で送られて来るので、それを殺せということのようだ。まあこれ以上のこと、例えば誰が乗っているだのを聞いても恐
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