暁 〜小説投稿サイト〜
おぢばにおかえり
36部分:第六話 レポートその五
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第六話 レポートその五

「わかったから。泣かないよ」
「いいの?」
「いいわよ」
 ついつい苦笑いになりました。
「だから泣かないの。いいわね」
「別に泣いていないよ」
「嘘仰い」
 今度は優しい笑みになったような。自分でもわかります。
「そんな顔していたわよ」
「気のせいだって」
 もういつもの新一君に戻っています。
「気のせいだから。じゃあデートだよね」
「ええ。それで今度はね」
「うん」
「台湾のコーナーに行くわよ」
「ああ、あそこね」
 何か知ってるみたいです。
「やっぱり中国だから?」
「っていうかね」
 また新一君に答えます。
「中国と台湾の違いも書かないといけないし」
「色々あるんだ」
「大学生だって色々あるのよ」
 これは本当のことです。といっても高校の時よりはずっとないですけれど。高校の時って何かと色々ありましたから。特に三年になってからは。
「だからね。いいわよね」
「僕は別にいいよ」
 やけに従順で気持ち悪い位です。
「先輩と一緒ならね」
「そうなの。よかったわ」
「だってさ」
 すぐにまたいつもの笑顔になって言います。
「先輩と一緒にいられるんだし」
「いつもそれ言うわね」
 いい加減聞き慣れてきました、はい。
「気にしないでいいけれどね」
「じゃあ気にしないわ」
 何なんでしょう、この子のこれって。高校三年からのことなんですけれど。
 とにかく台湾のところも見回って。それで終わりでした。私達は参考館を出ました。
 そこの入り口で。新一君はまた声をかけてきました。
「これからレポート書くの?」
「それは明日からね」
 そう新一君に答えます。
「図書館でその本を読んでからよ」
「そうするといいね」
 新一君も私の言葉に頷いてきました。
「特に急がないんだよね」
「提出は一週間後よ」
 私はそう答えました。
「ワープロでだから手書きよりも早いし」
「ふうん」
「だから間に合うのよ。明日の夜からかかるわ」
「ワープロってことはあれ?詰所の」
「いつも使わせてもらってるのよ」
 申し訳ないですけれど。主任先生や井本さんご夫婦の好意で。
「そうだったんだ」
「何か今回はかなりいいレポートが書けそうね」
「俺のおかげだね」
「そうね」
 今回はその通りなんで。新一君の顔を見上げて笑いました。
「感謝するわ」
「いやいや、御礼は別にいいけれど」
「私何も言っていないけれど」
 少しむっとなりました。この図々しさが本当に。
「何でそんな話になるのよ」
「違うの?」
「違うわよ」
 そのむっとした顔のまま答えました。
「御礼はさ」
「それでも言うのね」
 自分勝手なんだから。いつもいつも。
「お姫様だっこ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ