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俺の屍を越えてゆけ 暁一族 戦記
序章
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た。それにイツ花も慌てて如何してと問いただそうとしたが自分としては理由なんて直ぐに思い当たった、寧ろそうあるべきなのだろうとすら思えた。母親である『ささらノお焔』様から伝えられた呪いと朱点童子打倒を定められている事、母からの温もりを深く感じられずに鍛錬をさせられた事などを考えると嫌われていた当然だと思い心のどこかが苦しくなると同時に心が少し、楽になった。


―――ああ、そうか。来月の出陣の時には協力的になって貰うよ、くだらない事で死んだら元も子もないから。


だから、自分は嫌われてもいい寧ろ憎まれるべきだと思い突き放した。そうすれば……自分が死んだ時には悲しい思いなんてしない筈だから……。



「だったら当主様も覚えるべきでしょう、しかも何故お一人で出陣するおつもりなのですか!?」
「と、当主様失礼ながらイツ花も桜様と同じ御気持ちでございます。お一人での出陣は極めて危険で……」
「イツ花先生言いたい事も分かるよ、だけど桜と行くほうが余程危険なんだよ」

鋭い視線を投げ掛けると桜は今まで見た事もない父親(当主)の鋭い眼光に息を飲んだ。冷たい視線や自分に興味も無いような視線なら何度も向けられたが明確な敵意と嫌悪感が込められた物は初めての物であった。

「桜、お前が来た時に言った筈だ。出陣の時には協力的になれと、だが先月の出陣のあれは何だ。術は勝手に使う、背後から警告も無しに俺が鍔迫り合いをしている鬼に切りかかる、回復の指示は聞かない……まだあるけどこれ以上言わないとお前は何故置いていかれるのか理解も出来ないのか」
「……」
「俺はそんな事を一度でもしたか」
「……」
「答えろ」

ドスが利いた声に産まれて初めての恐怖を感じた桜は身体を震わせながら消え入りそうな声でしていないと答えた。それを知らなかったイツ花は当主の考えに納得しながらも未だ困惑し続けていた、命を散らすかも知れぬ戦場で信頼をせず連携も取らない相手と共に行動するなど持っての他。ならば一人で行った方が良いかもしれないがそれでも一人で無数の鬼共を相手取るなど危険にも程がある。

「この通りだイツ花先生。桜には新術を覚えさせる準備をしておいて、今回は九重楼へ行くけど深くまでは行かない。きついと思ったら直ぐに切り上げるって、安心して生きて帰って来るさ」
「ほ、本当ですね!?お約束しましたからね!?破ったら当主様を追いかけて苦手な物を沢山食べさせますからね!?」
「ハハハッそりゃ恐いな、意地でも生きて帰らないとね」

自分には向けない優しそうで陽気な笑いをイツ花へと差出し、自分は傍に置いてあった刀を握り腰へと挿すと出陣して行った。桜を残したまま本当に出陣して行く大地を見送る為に席を立ったイツ花は玄関前で火打石を鳴らして大きな声で元気良く、縁起を担ぐ
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