暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
コラボ
〜Cross over〜
Sentention;宣告
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医者が人を治している訳じゃない、と言ったのは、初めて余命を宣告された時のカエル顔の医者だった。

カップで出てくるタイプの自販機から取り出したコーヒーをすする医者は、自嘲するでもなくただ当たり前のことのようにそう言った。

じゃあ特効薬やワクチンとかを作る薬剤師かと問うと、それも違うと彼は首を振った。

夜勤明けなのだろうか、欠伸を噛み殺すようにすり潰した医者は、空になった紙コップを自販機横に据えられたゴミ箱にスローインしようとして失敗した。

慌てて取りに行く白衣の後ろ姿に、じゃあ何なのだ、と重ねて問うと、医者は振り向きもせずに簡潔に言った。

患者(キミ)達だ、と。

病人が神様のように何でもできると思って縋ってくる現代医術でも、決して万能という訳ではない。インフルエンザのような、毎年のように変異を繰り返すウイルスに対する特効薬のようなものは開発できてないし、全身麻酔のように意識がなくなる根幹のメカニズムがいまだに分かっていないにも拘らず使っているものもある。第一、伸びをしたり首を動かすと何故ゴキゴキ音が鳴るのかすら、いまだに仮説止まりで解明されていない時点で色々とお察しだ。

それでも、なあなあで、誤魔化し誤魔化しで、それでも何とかやりくりできているのは、すべて君達の身体が完治しようとしているからだ。

確かに、医者がいないといけない病や傷というのは、ごまんと存在している。

けれど、それでも、骨折はきちんと固定していたら勝手にくっつくものだし、適切な栄養と予防をしていればこれといった不具合を出すこともない。

分かるかい?とカエル顔の医者は言った。

それはどこか、優しい口調だったような気がする。

人ってのは――――いや、生命ってのは、本来そういうものなんだよ、と。

そう語った医者の背中は、なぜだかとても小さく見えた。少なくとも献血の時にあたった新人ナースさんの代わりに出てきた婦長ナース(熟女枠)くらいには信頼できるのに。

医者は、もう一回コーヒーを買おうか思案するように自販機とにらめっこしながら、独り言のような言葉を紡いだ。

だから僕達医者の仕事は、患者の背中を押すことだけだ。適切な処置をして、適正な判断をして、あとは患者次第。無責任だろうと、それが真実なんだ。

手術だって結局のところ患者の体力次第だしね、と付け加えて、医者はこちらに振り向いた。

すっと差し出してきたのは、新しく買ったカップ。黒く濁ったその水面から同じコーヒーかと思ったが、すすってみるとココアだった。

その甘さを舌の上で転がしていると、頭上からカエル顔の医者の声がした。

低く、静かなその声はどこか、厳しいものだった。

彼はこう言ったのだ。

だけどたまにいるんだ。君のように、生きる
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