二章 ペンフィールドのホムンクルス
15話 進藤咲
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「先輩! 先輩!」
麗の鋭い声に、意識が覚醒する。
桜井優は自身が地面に横たわっていることに気づいて、慌てて辺りを見渡した。
「ここは……」
辺り一面は紫の霧に包まれ何も見えない。
高梨市に墜落した事を思い出し、優は立ち上がりながら隣の麗に視線を移した。
「麗ちゃん、怪我は?」
「先輩が守ってくれたので擦り傷だけです」
見た限り、外傷は見当たらない。気丈に振る舞っている訳ではなさそうだった。
地面に衝突する間際、勢いを殺す為にESPエネルギーを放ったのが功を為したのかもしれない。
ゆっくりと周囲を見渡す。
妙に静かだった。人の気配を全く感じない。
嫌な予感がした。
周囲には戦闘の形跡が全く見当たらない。
亡霊に殺されたわけではないのに、住民が丸々と消えているようだった。
──霧が原因か?
これ自体が攻撃手段というのはありえそうな話だ。
試しに機械翼にESPエネルギーを送ってみるが、機械翼は沈黙したまま動かない。
機械翼を脱ぎ捨て、光翼を作り出そうと試みる。しかし、それも上手くいかなかった。
「先輩でも機械翼は動かせないんですか?」
「うん……ダメみたい。この霧に妨害能力があるのかな」
「先輩、どうしますか?」
麗が小銃を構え、緊張した声で指示を乞う。
「……とりあえず、本部に生きてる事を伝えよう。他に何人も墜落したはずだから。墜落者の生死が不明なのはまずいと思う」
「……連絡、ですか? でも通信機も通じないですよ」
「ESPエネルギーがあるよ。僕達はエネルギーの波形が本部に登録されてるから、誰の信号かも特定出来ると思う」
優はそう言って、頭上に右手を向けた。ESPエネルギーを練り上げ、上空に向かって打ち出す。
それは信号弾のように霧の中へ消えていった。
「霧の中で信号が減衰せずどこまで打ち上がるか分からないけど、ないよりはマシだと思う。後はとりあえず移動しよう」
優は二つ年下の少女の不安を拭う為に、何でもない風を装って行動を始めた。
「どっちに、ですか?」
「高梨市に広がってる霧は直径で大体一〇キロメートルくらいのものだったと思う。どの方向に歩いても数時間あれば突破出来るんじゃないかな」
小銃を構え、ゆっくりと霧の中を進む。
アスファルトを踏む自分たちの足音が妙に大きく聞こえた。
「とりあえず、この道を進もう。何かの目印がないと、この霧じゃ方向が分からなくなる。大通りに出て、ひたすら同じ方向に進んだ方が効率が良さそうだ」
「了解です」
麗を庇うように先頭に立つ。
「……街の中、本当に誰もいないです」
後ろから麗の声。
優は油断なく前方に小銃を構えながら、彼女
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