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Raison d'etre
二章 ペンフィールドのホムンクルス
4話 篠原華(2)
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、じゃあ私もそれで」
 抗議を続ける華と、それに便乗する京子。
 優は二人をちらっと見て、首を傾げた。
「じゃあ、何て呼べばいいの? ……華ちゃん?」
 試しに言ってみると、華の顔が茹蛸のように赤く染まった。名前で呼ばれるのが恥ずかしいなら、無理に張り合わなければいいのに、と苦笑する。
「私は?」
「……京子?」
「……何で私だけ呼び捨てな訳?」
 不満そうに唸る京子。
「だって、ちゃん付けするタイプじゃないし……京子ちゃん、とかどう考えても似合わないと思うよ」
 そう言って、優はまだ半分以上残ってる親子丼に箸をのばした。さっきから話してばかりで一向に中身が減っていない。冷める前に食べきらなければ、とペースをあげる。
 それに合わせるように華は唐揚げ定食、京子はしょうが焼き定食に手をのばした。愛はさきほどから隣で黙々とミートスパゲティを食べ続けているが、あまり量は減っていない。食べる速度が遅いのだろう。
 そのまま食事を続けていると、優たちのテーブルの近くに一人の女の子が近づいてきた。華か京子の知り合いだろうか。
 チラ、と横目で見ると少女は優のすぐ隣で立ち止まった。
「あ、あのっ!」
 思わず、話しかけてきた少女に目をやる。
 ツインテールが特徴的な小柄な少女だ。恐らくは年下だろう。
 何故か、彼女の目は真っ直ぐと優に向けられていた。
 どこかで会った事があっただろうか、と記憶を辿るも思い出せない。
 キョトン、とする優に向かって、彼女が口を開く。
「す……す、す、すすす好きですっ! わ、私と付き合ってくださいっ!」
 その一言で場が凍った。
 視界の隅で華が石化しているのが見えた。
 誰かのスプーンが落ちる音。
「……らぶらぶ」
 愛の呟きが、妙に大きく響いた。
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