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Raison d'etre
一章 救世主
2話 篠原華
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 翌日、優は準に案内されながら、訓練の為に寮棟から離れた施設に向かっていた。
 本部の敷地は山奥にある為か、必要以上に広大だ。一人では目的地まで行けそうになかった為、奈々が準を案内人として起用してくれていた。教育部隊の人間を利用せずに、無関係な準を案内人に起用したのは、交友関係が薄い優に対する配慮だろう。一人でも親密な人間がいれば、人はそれだけで新しい環境に溶け込みやすくなる。
「今日は、何をするんですか?」
 前を歩く準に声を投げかける。
「室内プール使うって言ってたから、着水訓練だろうな」
「……プールですか?」
 優は秋風で乱れる髪を押さえながら、微かに嫌そうな表情を浮かべた。
 その様子を見た準が小さく笑う。
「水温は低いだろうが、戦闘服の下にウェットスーツを着こむから、冷たいのは一瞬だ」
 話しているうちに、大型の施設に辿りつく。中に入ると、真っ先に受付が見えた。しかし、人影はなく、照明も半分以上が落ちていた。
「受付、誰もいないんですか?」
「ああ。中隊員の生活環境改善を名目に建てられた施設なんだが、利用者が少なすぎて週に二回しか開放されていない。今日みたいな訓練の時だけ特別に開放されている」
 こっちだ、と準が奥の階段を上り始める。優はその後を追いながら、薄暗い施設の内装を不思議そうに眺めた。
「何だか、勿体ないですね。予算、余ってるんですか?」
「余ってるとかの問題じゃなくて、必要だったんだ。中隊の離脱率は高い。入って三年経てば特別年金が出て生活も保障されるから、中隊の中心だった古参がどんどん抜けていく。繰り返される戦闘で精神的に参って抜けていく奴も多い。中隊へ定着させるために、極力居心地の良い空間を提供する必要があった。ただ、この施設は稼働率が低すぎて、一時期はかなり叩かれたよ」
「学校の授業で聞いた事があります。予算を使い切らないと次から減らされるから、必要なくても使っちゃうんだって」
「そうだな。そういう面もある。学校はどこに行ってたんだ?」
「花公院です」
「……驚いたな。名門じゃないか。確か、最近共学になったばかりだったな……お、ついたここだ」
 目の前で準が立ち止まった為、その背中に優はぶつかりそうになった。
「中に着替えが用意されてるはずだ。着替えてきてくれ」
「はい」
 頷いて、部屋に入る。
 中は普通の更衣室だった。棚の一つに戦闘服とウェットスーツが綺麗に畳まれて置かれている。優は早々に着替えを済ませて、外に出た。
「早かったな」
 そういう準の隣には、知らない少女がいた。肩まで届く茶色に染められた髪に、どこかふわふわとした雰囲気を纏う少女は、優と同様に黒い戦闘服を着ていた。
 優が困惑した様子で少女を眺めていると、少女は
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