一章 救世主
1話 神条奈々
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ける必要はない。君がそうした理不尽な目に遭わないようにすることも、私の役割の一つ。入隊時にも言ったけれど、何かあれば、私に相談すること。いい?」
「はい」
優が頷くと奈々はにこりと微笑んで、それからすぐ近くの扉に目を向けた。
「それじゃあ、行きましょうか」
奈々が扉を開く。優は奈々に続いて、部屋の中に足を踏み入れた。
白を基調にした講堂のようだった。その中には、優と同年代と思わしき高校生くらいの少女たちが並んでいる。およそ三〇人。その全てが、女性だった。
少女たちの視線が優に注がれる。優は緊張で身体を硬くしながらも、少女たちの前を通って檀上にのぼった。
「事前に告知した通り、彼が今日から正式に第一小隊に配属される事になっている」
奈々がよく通る声で告げた後、自己紹介をするように目で合図を送ってくる。優は一歩前に出て、頭を下げた。
「今日からお世話になる桜井優ですっ。よろしくお願いします」
静寂に包まれた講堂に、僅かに上擦った優の声が響いた。それに応えるように数多の拍手が室内に木霊する。優は安堵の笑みを浮かべ、深々と下げていた頭を勢いよく上げた。
「彼は昨日付けで前期初級訓練課程を終え、今日から寮棟に入る事になっている。暫くは後期初級訓練課程に入るけれど、合同訓練にも参加してもらうから、何かあったら率先して手を貸してあげるように」
優の隣で、奈々がよく通る声で補足する。
亡霊対策室・総司令官、神条奈々。腰まで届く黒髪と人形のように整った鼻筋が印象的な彼女は、この組織の頭である。女性にしては背が高い為、隣の優の背の低さが際立っていた。
奈々は一度だけ隣の優をチラリと見た後、すぐに少女たちに向き直った。
「今は簡単な紹介だけ。これから彼には後期初級訓練課程のカリキュラムを消化してもらう予定がある。後日、正式な歓迎の場を設けるけど、何か質問があれば今のうちに済ませて」
奈々がそう言うと、室内が僅かにざわめく。そして、部屋の後方にいた一人の少女が手をあげた。肩まで届く茶髪に、活発な雰囲気を纏っている。
「歳はいくつですか?」
優は一度だけ隣の奈々に視線を向けてから、その質問に答えた。
「十六歳です」
途端、室内に驚きの声が反響する。
「中学生じゃないの?」
ざわめきの中からそんな呟きが聞こえ、優は引きつった笑みを浮かべた。平均身長よりも低いため、よく言われる事だった。
「彼女はいますかぁ?」
前列にいた長身の少女がからかうように言う。同時に、周囲から黄色い声があがった。
優が困ったような笑みを浮かべて隣の奈々を見上げると、奈々は呆れたように首を横に振った。
「公式の場でそういう質問はしないように」
その援護射撃に優は安堵の息をつ
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