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いたくないっ!
第三章 敦子、目覚める
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やるしかないじゃないか。
 わたしには天性の才能なんかないのだから。

 しかし、一体いつから開けっ放しにしていたのだろう。
 ひょっとして昨夜、寝る直前の、人形劇の「ピュリピュール」の声真似練習しているところも、しっかり聞かれていたりして。オイオイ、フザケンナプリプリプップップーー、とかあ。

 ま、いいや。どうでも。
 それより学校学校。
 早く着替えないと、ご飯を抜かなきゃバスに間に合わなくなっちゃう。

「サンサンソーラーパワーーッ! メイクアップー!」

 急いでいるのか余裕なのか、大声で叫びながら素早くパジャマを脱ごうとして、足をもつれさせて、転んで頭打った。

     2
「では、行ってまいる」

 いや。ちょっと違う。今日の気分はコレじゃない。こんなクールなキャラじゃない。
 では、すかんと抜けるように、

「行ってきまああっす!」

 いやいや、これも違うな。

「行ってくーるぽおおん」

 うーん。どれもこれも、なんだかしっくりこないなあ。
 ま、単に、行ってきまあす、でいいのか。
 別に奇をてらう必要はない。
 声優への道に、近道なし。

 でも、「はにゅかみっ!」の第八話で、主人公(こと)(のり)(こと)()の声優をやってる()()(ゆい)()さんが、モブキャラ女子中学生Bの声も当てていて、その時の演技が抜群によかったから、よし、そんな感じにちょっとやってみようか。

「行ってぇきまああ…いや、違うな、行って……違う、もういっちょ、行ってき…」
「敦子ーー!」
「いいから、はやく行けよ! それかせめて、玄関のドアを閉めろお! 恥ずかしいだろ!」

 朝も早くから、母と兄に怒鳴られる敦子であった。

     3
 (さわ)(はな)(あつ)()は通学カバンを手にぶらさげ、ごみごみした喧騒の中を、友達と雑談しながら歩いている。
 雑談といっても、敦子はもっぱら聞き役相槌役だが。

 ここは都立武蔵野中央高等学校。彼女の通っている学校だ。

 (はし)(もと)()()()(どう)()()(おお)(しま)(えい)()
 と、沢花敦子。
 もう学校も終わり、夕刻、仲良し四人組は、前後二人ずつの陣形で下校のため昇降口へと向かっているところである。

「そん中でもさあ、さすが新商品だけあってサワーチョップマロンコロネが、最高に美味しかったあ!」
「へええ。名前から味の想像がつくような、つかないようなだけど。そんな美味しいってんなら、あたしもハナキヤに行ってみようかなあ」
「ふふん。もうすっかり話題になっちゃってるからねー、最
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