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俺の四畳半が最近安らげない件
そして豪傑へ・・・〜小さいおじさんシリーズ20
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の容姿を確認した。
そこそこ長身な白頭巾にも迫ろうかという長身、痩躯。鑿で彫りつけたような硬質な眼窩に、ギラギラと異様な光を放つ瞳を擁し、常に辺りを睨み付ける。…この時代なら当たり前のことなのかもしれないが…日常的に人を殺している人間の顔つきだ。先程の白頭巾じゃないが、相当なSAN値の低さを伺わせる。
「ほう、貴方が噂の」
興味深げにまじまじと彼を見つめ、白頭巾が立ち上がった。
「韓遂殿、ですな」
声を掛けられた瞬間、神経質に磨き込まれた二股の鉾を構えて弾かれたように振り返った。…もうなんか、軍師が持つ武器じゃないし、カタバミの種みたいな『触れなば弾けん』っぷりだし…なにこの武将。
「俺の名を呼んだな!?俺の名を怪しげな呪術に使う気だな妖術師め!!」
「はっはっは…何かもう…はっはっは…」
…ううむ、一国の丞相捕まえて妖術師呼ばわりしたぞ間違ってはいないが。笑うしかなくなってる白頭巾とか初めて見たわ。多分、突っ込み所が多過ぎて迷っちゃっているんだなあの男は。
「何話し合おうとしてんだ!逃げるぞ!!あの状態になった韓遂との話し合いは無駄だ!!」
豪勢が叫んだ途端、傍らの畳が跳ねあがり、赤い疾風が白頭巾を巻き込んで奔った。
「うおぅ、嫁が出たぞ」
「判断早いな、あの豪傑は!!」
相変らず白頭巾の嫁に大変失礼な二人だ。白頭巾を小脇に抱えた嫁は、その勢いを衰えさせることなく踵を返すと跳ね上げられた畳の隙間にその身を滑り込ませて消えた。
「すげぇな、矛を交えることなく、もう関わり合い自体を避けたな」
「ナイス判断だ、あのアホが余計な事を云って刺激する前に撤収というわけだな…女だてらに戦場に身を置き続けただけある。卿もさっさと逃げろ!」
云うや否や、端正も重い上着を脱ぎ捨てて奔った。その刹那、その上着を二股の鉾が貫く。…な、なんちゅう悪者っぽい武器だ。確かに軍師かと云われると疑わしい。
「云われんでも…出合え!!」
豪傑の号令と共に、疾風の如く二人の豪傑が駆けつけた。韓遂を上回る背丈の、岩石が人と化したかのような偉丈夫と、山のような重量感の兵が、豪傑の両脇を固める。…うわぁ、これ絶対典韋と許?だわ。大家の息子が喜びそうなので、写メとっておくことにする。
「―――退却!!!」
……あ、迎え撃たないんだ。
「…くっ、痴れ者共めが…!!」
あっという間に撤収完了した四畳半に、俺は韓遂と二人きり。何となく遠巻きに眺めていると、突然、韓遂と目が合った。
「……むっ」
「……うわ」
脛を変な鉾で刺される覚悟を固めた瞬間、韓遂がふいと視線を反らした。
「……何処だぁ、痴れ者共めぇ!!」
韓遂はそう叫ぶと、ギラギラした目で辺りを睨みつけながら襖の隙間に身を滑らせた。


―――何か、彼らの中で『俺は居ないものとする』という不文
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