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俺の四畳半が最近安らげない件
そして豪傑へ・・・〜小さいおじさんシリーズ20
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初秋の風に、肌寒さを感じる。俺は半袖の腕を軽くさすり、窓を閉めた。
俺の四畳半に同居する3人の小さいおじさんは、何故か換気が好きで頻繁に窓を開ける。そろそろ寒くなって来たので勘弁してほしいのだが、3人にとって俺は『居ないもの』という扱いになっているのだ。交渉の余地すらない。だから俺も勝手に窓を閉める。
「そろそろ、温かい茶が旨い季節になってきたのう…」
豪勢が爺さんのようなことを云いだした。どうかと思っていたアロハシャツも最近は鳴りを潜め、ここに現れた当時と同じ、豪奢な刺繍の上着を羽織っている。ちゃぷ…と柄杓が湯をくぐるような音がした。端正が緑茶を汲み出して、自らの茶碗にそそいでいる。
「菓子にやたら栗が入り始める時期でもあるな。見ろ、また栗だ」
いささかげんなりしたような顔で、端正が切り分けられた栗饅頭の断面を覗き込む。
「栗うまいだろうが。貴様は食い物に文句が多過ぎなのだ。…それより見ろ、この美しい断面を!」
食品サンプルのように整った断面を、豪勢が満足げに開いた。そしていつも通り、一番大きく切り分けられたピースを取り上げて頬ばる。
「うちの夏候惇の剣さばきの素晴らしさを見たか。なぁ?貴様の所にこんな芸当が出来る豪傑がいるか?」
「…切り口の美しさなど、実戦にさほど影響なかろうが」
そう言い捨てて端正は、つまらなそうに栗の少ない箇所をつまみ上げた。


豪傑。


この言葉を聞いて思いつく武将といえば…今、名前が出た夏候惇、許?、張遼、呂布、関羽、張飛、魏延、典韋、徐晃、馬超、趙雲…呉にも太史慈や甘寧などの人材が居ない事もないが、どうも『豪傑』っていうと魏に偏っている気がする。なんというか…こう、ちょっと云いにくいんだが…。
「必死に脳筋集めた甲斐がありましたなぁ」


なんでズバリ云っちゃうかな白頭巾野郎は!!


「卿…俺がいくらなんでも失礼だと思って云わないでいた事を軽々とよく云うなぁ…」
端正が、ありありとドン引きの表情を浮かべた。茶碗に軽く口を付けて、白頭巾はくっくっく…と陰鬱な笑い声を上げる。
「貴様、嫉妬か?豪傑尽くしの魏が羨ましいんだろう。ふん、関羽殿亡きあとの蜀は深刻に人材不足だったものなぁ。最終的にはメインの武将は沙摩柯とか兀突骨とか読み方からしてよく分からん連中ばっかだったじゃねぇか。外人アルバイトだらけのファミレスかよ」
「豪傑豪傑ってバカの一つ覚えのようにおっしゃいますが」
羽扇で口元を隠し、白頭巾がいつも通り、人を小馬鹿にしたような顔をした。
「武勇に優れているということは、それだけ人を殺すに躊躇いがないってことじゃないですか。戦中ならいざ知らず、平時にあんな頭おかしいのが大勢居たら『サイコパス軍団』と呼ばれる異常者の塊でしょうが」
「―――ぐぬ」
「鏃に刺さった自分
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