第205話 久水家の宴
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先輩の両親だったらしい。毅さんの方は見た感じだと六十代後半くらいのご老体のようにしか見えないが、酒を手に腹踊りしたり室内でバク転したりと、まるで落ち着きがない。
一見子供のような振る舞いだが……あの頭、ご年配に違いない。茂さんのスキンヘッドとは違う、正真正銘の禿頭だ。
一方、舞さんの方ははち切れんばかりのナイスバディを和服の中に隠し、慎ましく座っている。……本当に還暦近いんだろうな?
茂さんは相変わらずの仏頂面だが、一人称は元通りの「ワガハイ」に戻っていた。その態度に舞さんが苦笑いで苦言を呈したが、当の本人に変化はない。
「いやー、まさかあの茂が、この本家に友達を連れてくる日が来るとはのぅ! 二十年間ぼっちだった茂にも、ついに仲のいい友達が出来たか……。ようし、龍太君も起きたことだし、今宵は飲むぞ! 朝まで飲むぞ! ううう……」
「あらやだ、泣かないでくださいまし。わたくしまで……もらい泣きしそうで……。そ、それに龍太様はまだ未成年なのですから……」
「何を言うか! 男と男の語らいに酒が入らんでどうする! 拳で語り合う友情には、最高の酒で応えねばならん! 瀬芭、酒を持ってこーい!」
「はは、ただいま」
――と思っていたら、急に親御さん達の方がさめざめと泣き始めていた。え、ぼっちって茂さんのこと? 友達って、俺のこと?
しかも、酒瓶持って来てるあの使用人さん……和服のせいで気付かなかったけど、まさか茂さんの別荘に居たセバスチャンさんじゃない? 瀬芭って名前だったんだ……なるほど、だからセバスチャン。
「おうおう瀬芭、お主も飲まんかい! 今宵は無礼講じゃ!」
「ははっ! ……この瀬芭、坊っちゃんの此度の躍進に無上の喜びを感じております。しかし、それゆえに! 件の決闘の審判として、是非とも……立ち会いたかったッ! うおろろろろんっ!」
……いや、あの決闘に限っては来なくてよかったと思うよ。多分気が散っちゃうから。
「ワガハイが違うと言っても聞かなくてな。――こう騒がしくては話になるまい、外に出るか」
「お、おう……」
肩を抱き合いむせび泣く久水家の面々を尻目に、茂さんはスッと廊下へ出て行ってしまった。俺は後ろ髪を引かれる思いをあの人達に感じつつ、そのあとに続いて行く。
やがて茂さんが立ち止まり、腰を下ろしたのはさっきの池の目の前だった。その隣に俺が腰を下ろしてから程なくして、寡黙だった彼がようやく口を開く。
「……結論から言えば、この決闘は貴様の勝ちだ。あの一戦で、今の貴様でもワガハイよりは使い物になると証明されてしまったからな」
「……」
――茂さんはそう言うが、俺の胸中は晴れない。勝った、という気がしないのだ。
精神面では終始、俺は茂さんに圧倒されてい
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