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フルメタル・アクションヒーローズ
第168話 姫君は大変な爆弾を投下して行きました
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から察するに、いくら疲れているとは言え、この軽いパンチが全力だとは考えにくい。とにかく感情をぶつけたいという気持ちと、こんなことをしても意味がないという理性がないまぜになり、この程度の攻撃になっているのだろう。

 ……むやみに掘り起こされたい話ではなかったはず。彼の怒りや悲しみは、尤もだ。この件に関しては、そうとは知らずに無神経なことを口走った俺が悪い。

「う、ぐすっ……ぅ、えぇっ……」
「――辛いよな、ごめんな。思い出させちゃって。じゃあ、今一緒に居てくれてる人を探そっか」
「……ワーリ、ワーリ……どこぉ……」
「そうか。ワーリって人なんだな。……大丈夫。俺が言えたことじゃないけど、その人のところまでちゃんと連れてってあげるから、ね?」

 とうとうポカポカと殴る力も無くしたのか、彼は両手で目元を擦りながら啜り泣くようになってしまった。ここに来てようやく、彼の「普通の子供と変わらない」姿を見ることができたようだ。
 俺はそんな彼の頭を静かに撫で、刺激しないようにゆっくりと立ち上がる。そして日に焼けた小さく柔らかい手を、そっと握った。

「あ……」
「ホント、ごめんな。俺には何もしてあげられないけど……せめて君を、ワーリって人のところまで送らせて欲しい」
「……ぐす、うっ……テンニーン……テンニーン……」

 そして彼の手をそっと引き、診療所を目指して歩み出す。出来る限り彼の歩調に合わせ、優しい言葉を掛けながら。
 ――彼の両親がどうして居なくなったかはわからないが、俺個人にはどうすることもできない問題だろう。仮に故人だとすれば、なおさらだ。レスキューヒーローには、死んだ人間など救えっこないのだから。
 ならば、俺に出来ることは「今生きている」彼を、無事に親代わりの元へ返すことくらいしかない。どう罵られようと、俺は俺に出来ることをするしかないのだ。

 一方、少年はすっかり大人しくなっており、俺に手を引かれても文句一つ言わずに無言でついて来ている。さっきまでの彼なら、即効で俺の手を叩いてもおかしくないというのに。
 昔を思い出しているのか、彼は片手で目元を何度も擦り、うわごとのように「テンニーン」という名前を呼び続けていた。……その子とは、こうやって一緒に手を繋ぐ仲だったのかも知れない。

 この子については後でじっくり聞き出すつもりでいたが――今はそんな詮索が野暮だということくらい、「鈍感」と常日頃から罵倒されている俺でもわかる。
 そっと、ワーリって人のところまで送ってあげよう。俺がしてあげられるのは、もうそれだけなのだから。

「……!」

 その時。

 ふと、少年は何かに気づいたように目を見張り、その場に立ち止まってしまった。
 急に泣き止んで歩みを止めた彼の様子に、俺はただならぬ異
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