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フルメタル・アクションヒーローズ
第3部 着鎧甲冑ドラッヘンファイヤー重殻
プロローグ
第151話 四十八年前の死
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 一人の男が、死を迎えようとしていた。

 山と緑と蒼い空に囲まれ、自然の産物たる木材で造られた屋敷。その一室である畳の部屋に敷かれた布団の中で、その男は静かに天井を見詰めている。
 自らの手で築き上げ、自身と共に歳を取り続けたこの屋敷は、この男自身が選んだ死に場所だった。

 その男の髪は全て抜け落ちており、頬は加齢により弛み、顔だけではなく全身にシワが寄っている。息も絶え絶えであり、僅かに小突いただけで心停止を起こしかねない。

「……」

 だが、男の眼に苦悶の色はない。自らに訪れる死など、とうに受け入れているのだから。

「父上……!」

 そんな男の傍らで、枝のようにやせ細った手を握る、もう一人の男がいた。彼は布団の中にいる男とは違い、筋骨逞しい角刈り頭の若者といった容貌であり、紺色のスーツに隠された太い腕の中には、小さな赤ん坊の姿があった。
 その男が発した言葉の通り、この二人は親子。そしてこの赤ん坊は、死を迎えんとしている男の孫であった。

 心配そうに自分を見詰める息子の姿を瞳に映し、男はシワの寄った頬を吊り上げる。

「……そんな顔をするで……ない。この寺を継ぐのは……お前なのじゃぞ、ウ、グフッ!」
「は、はい……わかっております! この子も、必ず立派な跡継ぎに育てて見せますッ!」
「それは、その子が自分で決めることじゃて。……それで、名前はもう決まったのかの」
「えぇ。我が一煉寺の拳士として、相応しき男に育つよう――龍拳(りゅうけん)と名付けました。ボスニアにいる芳恵(よしえ)さんも、喜んでいるはずです!」

 いつ眠りにつくかわからない男を励ますように、息子はまくし立てるように声を張り上げる。だが、そんな彼の意気に反するように、男は眉を潜めた。

「……龍巌(りゅうがん)よ。お前にこの寺を継がせておいて、こう言うのは気が引けるが――ワシは、この寺を建てて本当に良かったのか……今でも迷っておる」
「えっ?」
「お前も……知っていよう。本来なら我が家は『花淵(はなぶち)』と言う、代々続く医師の家系であるはずじゃった。ゴホッ……ど、どんな人でも助けられる、そんな存在で居続けるはずじゃった……」

 息子に合わせる顔がない、という気持ちゆえか、男は天井を見据えたまま視線を動かさずにいる。そんな父の姿を、息子は固唾を飲んで見守っていた。

「……ガハッ! し、しかし、ワシは道を踏み外した。戦後、軍医としての使命から解放されたワシを待っていたのは、消し炭になり川に沈んだ家族の遺体じゃった。ワシは……己の無力さへの怒りゆえ、戦後に創始された少林寺拳法の門を叩き――五年足らずで破門された」
「ですが、父上! いかなる敵にも屈せぬ強さを手にするため、限界以上まで苛烈に己を鍛え上げる『
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