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フルメタル・アクションヒーローズ
第133話 ファーストキスに覚悟を込めて
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たんやな……って」

 一時は沈んでいた表情や声色が、次第に生気を取り戻していく。彼女の顔が完全に上がり、俺と視線が交わった時には、さっきまでの沈痛な面持ちは跡形もなくなっていた。

 ほのかに紅潮した頬。安らぎを漂わせる眼差し。その目元からこぼれ落ちる、暖かい雫。

 それを見て、彼女の語りを悪い冗談と片付けられる道理が、あるのだろうか。

「……やけど、あんたはアタシの知らん間に、救芽井とどんどん関わっていって、どんどん変わっていって。あいつのために、どんな無茶な戦いもして。気がついたら、アタシなんかが関わりようがないくらい、遠いところに行ってもうた」
「や、矢村。俺は別に遠いところになんて――」
「やけん、アタシ怖かった。龍太が、アタシの大好きな龍太が、アタシの知らん龍太になってまう。みんな龍太と一緒におれるのに、アタシだけ取り残されてまうって。所長さんに追い返されそうになった時から、ずっと、そう思っとった」

 俺の言葉を遮り、自身の胸中を語る彼女の頬を、熱い涙がとめどなく流れていく。僅かに視線を落としている今の彼女の姿は、中学時代から今に至るまでの中で、一度も見たことがない。

『この際やから言うとくけどな、アタシは龍太が好きや! 大好きなんや!』

 そして、あの言葉が脳裏を過ぎった時。
 俺はようやく確信した。あれは、冗談でもなんでもなかったのだと。

「やから、不謹慎やってのはわかっとるんやけど……R型の『腕輪型着鎧装置』を拾うて、あんたのことを助けられた時、ホントはスッゴく嬉しかったんやで。アタシなんかでも、出来ることがあったんやっ……て」
「……矢村。そこまで気にしなくたって、俺にとってお前は十分すげぇんだよ。お前が居てくれなかったら、俺は知らない世界に独りぽっちだったんだ。お前はずっと、俺のことを助けてくれてたんだよ」
「――えへへ。やっぱ、龍太は優しいなぁ。ホントに……」

 矢村は大粒の涙を流しながら、いつも通りの太陽のような笑顔を輝かせている。――だがその涙のせいなのか、無理をしているようにしか見えなかった。

「……やけど、あんたは救芽井のために戦うんやろ? 救芽井の夢、しょっとるもんね」
「そうだな。……すまん。俺はやっぱり、あいつのヒーローをやらなくちゃいけないんだ。今、ここで辞めるわけにはいかない」
「別に、謝らんでええよ。アタシにとっても、あんたはヒーローなんやし。……四郷のこと、絶対に助けたってな?」

 彼女はその笑顔を維持したまま、ようやく俺の意志を肯定する言葉を出してくれた。……無理矢理にでも、納得しようとしてくれているのだろうか。

 彼女の気持ちは、素直に嬉しいと思う。もし救芽井や久水と出会っていなければ、彼女を受け入れることに何の躊躇もなかったは
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