暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第25話 敵のボスには得てして事情があるもの
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
る――なんて考えてたのかもな。
 あいにく、俺はそこまで情に厚くはない。ついでに言うと、俺はもはや『赤の他人』じゃない。

「その家族のためだとかなんだとか言っといて、結局そいつらをまとめて泣かしてんじゃねーか。そんなはた迷惑な親切は、誰から見たって御免被りたいね」

 そう。救芽井は、さらわれた両親のためにこの町に来て、あんなに怒ったり泣いたり戦ったりしていた。『普通の女の子』の彼女がそんなことをしなきゃならないのは、古我知さんが余計なマネをしているからに他ならない。
 なら、俺がやらなくちゃならないことは一つ。

「そんなもん、ブッ壊してナンボだろ」

 そんな俺のキメ台詞が効いたのか、古我知さんは一瞬キョトンとした――と思ったら。

「あはは……そうかそうか。ブッ壊す――か」

 割と平然でした。
 ……いや、あのねー。こういう説教タイムって大抵、敵ってたじろぐもんなんだと思うんですよ。だからちょっとくらいうろたえてくれたっていいんじゃないかなー。

「夕べ、遠回しに君のお兄さんに同じ話題を振った時、同じことを言われたよ。『悪いのは、勝手なことしでかしてる奴の方だ!』ってね」
「……あ、兄貴が?」
「ああ。――いやぁ、やっぱり兄弟だねぇ。君自身、彼になにか素晴らしい輝きを貰ったことがあるんじゃないかい?」

 からかうような口調で、古我知さんはニヤニヤしながら俺の反応を伺う。その一方で、ボソボソと「『一煉寺道院』なんて場所を隣町で見たことがあるが……まさかね」とか呟いてるが。

「……素晴らしい輝き、ねぇ。そんなよく出来たエピソードなんてないなぁ。あいにく、ダサくて薄汚れたお話しか持ち合わせがねーんだ、これが」

 ――俺と兄貴の話。そこには、素晴らしい輝きなんてない。
 あるのは薄汚さ、ダサさ、そしてちょっとの眩しさだけだ。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ