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星雲特警ヘイデリオン
番外編 星雲特警と怪獣映画
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がら――太?も、上映が始まった画面に視線を移すのだった。

 ◇

 ――それは、戦争を知る世代が前世紀に制作した、モノクロの特撮映画だった。

 ある日突然、地質調査を行なっていた樹林警備隊を襲った謎の怪獣。50mにも及ぶ巨体である、その怪獣は――まるで、キノコ雲のような異様な面相を持っていた。
 その正体は核実験による環境破壊の影響で突然変異した、ジュラ紀の恐竜だったのだ。
 圧倒的な耐久力と破壊力を兼ね備えた怪獣は、警察や軍隊を圧倒。街は破壊され人々は逃げ惑い、人類はなす術がなかった。

 ――そんな時。ある1人の天才科学者が、怪獣を抹殺する超兵器を作り上げる。だが、その超兵器が軍事利用される事態を危惧した彼は、機密が漏れないよう資料を焼却。
 さらに超兵器を、親友の樹林警備隊隊員に託して――拳銃自殺してしまうのだった。

 そんな彼の想いを受け止めた隊員は、怪獣を仕留めるための特別攻撃に志願。超兵器を誰にも利用させないため、仲間達にもその存在を隠したまま死地に向かい――やがて、怪獣の眼前で超兵器を作動させて、自爆した。
 怪獣との相討ちに持ち込んだ彼の死を悼む警備隊隊長は、「この悲劇を繰り返させぬためにも、自然を守らねばならない」と、決意を新たにする。

 ――それが、この映画の内容であった。
 過去のノウハウも何もなく、手探りの中で制作されたこの作品は、非常に粗も多い。だが、それを感じさせないほどの作り手達の想いが、画面を通じて観客達を惹きつけていた。

「ええのう……やっぱCGなんぞ邪道だわい。あの爆煙と臨場感は、生の映像でしか出せん。やはり昔ながらの特撮じゃないとなぁ」

 隣で、そう独りごちる館長を一瞥しつつ。太?は、怪獣を倒した後のラストシーンを、神妙な面持ちで見つめていた。

『……あの怪獣は、本当に最後の1匹だったのだろうか。奴という存在は、氷山の一角でしかなかったのではないか?』
『本当にそうだとしたら、我々人類は……どうなってしまうのでしょう』
『わからん。……だが、環境破壊の悲劇が繰り返される限り。この戦いも、犠牲も……同じように繰り返されて行くのだろう』

 沈痛な面持ちで空を仰ぐ隊長。その場面で映画は終わり、エンドロールが流れ始める。隣を見やると、館長が満足げな笑みを浮かべていた。
 太?のことを偏屈な趣味と言いつつも、実のところはこの映画が好きでたまらないらしい。

「やっぱ特撮はええのう……わしらが坊主くらいの頃は、仲間達と一緒に通い詰めたもんじゃわい」
「……今日も、来れて良かったです。今じゃ、ここでしか見られないから」
「そうじゃろ、そうじゃろ。……なぁにが不謹慎じゃ、全く。偉い連中はこれの良さがまるで分かっとらん」
「……」

 ――前世紀、それも
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