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剣聖がダンジョンに挑むのは間違っているだろうか
第10話:前編
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た。いや、声を掛けて来たのは人間ではなく、斬魄刀の本体――この場合、僕の相棒である『斬月』だ。どうやら、いつの間にか僕は自分の心象世界に入ってたみたいだ。


「確かにミノタウロスに襲われた当時の君はただの臆病者だったかもしれない。だが、今の君は恐怖を捨てて前を見ている。立ち止まることもなく、少しずつでも前に進んでいる。
ならば、今の君は以前の君とは違いただの臆病者なんかじゃない。慎重に物事を進めることができる、人の上に立つ資質を持つ者だ」


さ、流石に人の上に立つ資質が僕にあるっていうのは持ち上げ過ぎな気がするけど、確かに『斬月』の言う通りだ。今の僕はあの時の僕とは違う。

完全に恐怖を捨てきれずにいるかもしれないけど、それでも前を見る様にした。立ち止まらず、少しずつでも前に進む様にした。少しでも早くテレシアさんの隣に立てる様になる為に。

以前の自分は恥じるべき存在だったかもしれない。けど、そんな自分を変えたいという思いがあったからこそ、今の自分になることができた。

なら、以前の自分を否定するだけでなく、肯定した上で今の自分に自信を持つべきなんじゃないか?でなきゃ、『斬月』の相棒を名乗る資格が無くなっちゃうよ。


「答えは得た。ありがとう、『斬月』。僕はこれからも頑張っていけるよ」


僕が斬月にそう告げると同時に、僕は心象世界から現実世界へと戻った。



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