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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 8
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 見わたすかぎり石と砂だけで水も緑もない荒野のただ中を年端もいかない少年少女たちが進む。
 みな一様に疲れ果てた表情をしており、歩を進めるのもつらそうだ。
 そのうちのひとりがくずれ落ちた。

「ハンス!」
「ヨセフ、ぼくはもうだめだ。ここへおいていってくれ……」
「なにを言っている! ジェノヴァはもうすぐだ。がんばれ! ハンス、しっかりするんだ!」

 ヨセフが必死に声をかけるもハンスの意識はもどらない。

「ヨセフ、無理だよ。ろくに食料も薬もないのに、ここまで来れたことがおかしいんだ。もうこれ以上は……」
「そうだよ、もう無理だ」
「ううっ」

 嗚咽まじりの泣き声が周囲から漏れ聞こえる。

「神よ……。あなたはわれわれを見捨てるおつもりなのですか!? あなたのためにこんなにも苦労してきたのに……!」

 この年若き者たちは少年十字軍と呼ばれる集団のひとつだ。
 一三世紀初頭。聖地エルサレムを取り返すためにフランスやドイツといった西ヨーロッパ各地から一万人とも三万人とも伝わる人数の少年少女がジェノヴァやマルセイユの港を目指して旅だったのだが、疲労や病気のために無事ジェノヴァへたどりつけたのは数千人にすぎず、しかも生き延びた数千人も奴隷商人にだまされてアフリカに売られてしまったという。 

「神よ、なぜです……。なぜわれわれにこんな試練をお与えになるのですか。神よ! 答えてください! 神よ、神よ、神よ! おお、神よ! 神よ、神よ、神よっ!」
「やかましいわ!」
 
 どげしっ。
 
「あ痛っ!?」
「カミカミ、カミカミうるさいわっ、おまえはトイレのあとに深刻な現実を突きつけられた人かっ。それとも『ノラガミ ARAGOTO』の放送が待ち遠しいのか! というかもう放送はじまっているな。いそがしくてアリアも牙狼もチェックできん!」※執筆当時の話です。

「な、なななっ、なんだ君は? なにをわけのわからないことをッ!?」

 おのれの頭をどついて意味不明なことをわめく見知らぬ青年。頭髪を剃りあげている。一瞬トンスラ
(鉢巻をしたような形に頭髪を残してそれ以外の毛を剃るカトリックの剃髪)かと思ったが、そうではない。古代エジプトの神官のように頭全体をつるつるに剃りあげているのだ。
 それに見たことのない格好もしている。異教の徒であろうか。

「神仏にすがる前に自分でどうにかしようとは思わんのかっ、嘆いてばかりいないで傷病者や疲労困憊している者たちを中央に集めて休ませろ。野盗や獣におそわれるぞ」
「……いま進むのを止めたらもう立ち上がれない。こんな荒野で歩みを止めたら野垂れ死にするだけだ」
「歩けるような状態じゃないだろ、そのハンスという少年はどうするんだ、見捨てるのか」
「それでも先に進むしか
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