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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 5
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機に直面しておるわ、たわけー!」

 新月刀が鞘走り白刃が褐色の首を断たんとうなりをあげる。

「???(ウーン)」

 褐色の肌の青年の口から出た金剛夜叉明王の種字真言が鋼の刀身に変化をおよぼした、刃が蛇身となり蒲寿庚の喉へと喰らいつかんとする。
 蒲寿庚はとっさに片手で蛇の首をにぎり、毒牙を制す。

「金生水。金気の塊である刃には水が生じやすい。蛇は水気の生き物ゆえ変化もたやすいってね」
「お、おまえは呪術者か!?」
「いかにも、たこにも」
「…………」
「…………いまのは『いかにも』の『いか』と『たこ』をかけた地口だよ」
「そんなことはどうでもいい! 呪術者がどうしてここにいるっ」
「ぼくの名は智羅永寿(ちらようじゅ)。天竺では少しは名の知れた存在さ。東安王メデフグイ殿下の客将、方臘どのの要請でモングル軍の加勢にまかりこした次第だよ」
「ああ、そういえば大量の呪術者をつのっていたな……」
「そう。それで現地でひと働きする前にこちらで一服していたんだよ」
「英気を養いたいのなら街にでもくり出せばよかろうに、なぜよりにもよってこの場所で酒を盗み飲むか」
「泉州でもっとも上等な美酒と美姫を求めるなら、蒲寿庚の邸だと思ったからだよ。いや、泉州どころか中華中の美酒と美姫がこの街にあるんじゃないかな」

 泉州の繁栄ぶりはあのマルコ・ポーロやイブン・バットゥータが『東方見聞録』や『大旅行記』に記している。「海のシルクロードの起点」とまで称した海上貿易の拠点たる港湾都市だ。

「美姫だと、おぬしまさか……」

「あら〜ん、智羅さまったらこんな場所にいたのね」
「んもう、だまっていなくなるなんて、いけず〜」

 蒲寿庚の誰何は嬌声に掻き消された。かこっている妾たちが目の色を変えて闖入者にしなだれかかっているではないか!

「こ、こらおまえたち。そんな得体の知れぬ妖術使いに色目を使うとはなにごとだ。おまえらの主人は私だぞ!」

「あは〜ん」「うふ〜ん」「ジュテーム」「アモーレ」

 主人である蒲寿庚の言葉などどこ吹く風、褐色の肌をした青年――智羅永寿に艶めかしくしなだれかかる。
 あきらかに様子がおかしい、妖しげな術に囚われているようだ。

「漢人、喫丹人、勃海人、女真人に高麗人。波斯人や羅馬人の女もいるよね。やっぱりぼくの読みはあたっていた。泉州には美姫がそろっている。極楽、極楽」

 その言葉のとおりペルシア、インド、アラブ、中央アジア。さらには遠くヨーロッパの生まれと思われる美女たちにかこまれて、猫のように目を細める。

「きさま、わが妾どもになにをした!」
「なぁに、龍猛(りゅうみょう)の真似をしてちょっとした悪戯をね」
「龍猛……、龍樹菩薩のことか」
 
 龍樹菩薩。ある
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