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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
邯鄲之夢 3
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ね。べつに歴史や国語のお勉強をしているわけじゃないんだし」
「ちなみに『一網打尽』て言葉は宋の時代に生まれたものだからそれ以前、たとえば三国志の時代を舞台にした作品で使われるのはおかしい」
「ふぅん、でもなんか普通に使ってそう」
 
 ふたりはそんなやりとりを交わしつつ、崖山の広くもない平地に建てられた行宮へと案内された。





 南宋の幼き皇帝(ちょうへい)への拝謁はあっさりとかなった。
というのもむしろむこうのほうが噂の神仙に会ってみたかったからだ。

「おお、おぬしが慈雨花冠か!」

 花冠。あるいは女冠、道姑とも。いずれも女性の道士を指す呼びかただ。どうも雨乞いを成功させたことから京子は宋の人々からそのような呼ばれかたをするようになったらしい。

「朕は去年の五月に竜の姿を見た。思えばあれは神仙の助けがあるという瑞祥だったにちがいない」

 前の年である景炎三年(一二七八年)に兄である端宗が崩御すると、趙?が皇帝に擁立され年号を祥興と改め、元軍を避けて崖山へと逃れた。そのさいに行宮にほど近い海面に虹色に輝く竜が出現したという。そのことを言っているのだ。

「あ、あなたが趙?ちゃん!?」

 話には聞いてはいたが齢八歳の少年皇帝のあどけない姿に京子はおどろきをかくせなかった。
 薄紫の長衣服に腰帯からは佩玉をつるし、頭には冕冠(べんかん)をかぶっている。
 佩玉とは文字どおり玉制の装身具で、ドーナツ状の璧などが有名だ。冕冠は前後にすだれのようなものがぶら下がっている冠で、秦の始皇帝や蜀漢の劉備、日本だと後醍醐天皇の肖像画なのでかぶっているあれだ。
 映画や漫画でおなじみの中華の皇帝の正装なのだが、なんともかわいらしい。この幼帝、どこか春虎の使役式である霊狐のコンに似た面影があった。

「こ、これ京子先生。いくらなんでも聖上を呼び捨てにするのは無礼ですぞ」

 かたわらにひかえる陸秀夫があわててたしなめる。

「あら、ごめんなさい。歴史上の人物だからつい呼び捨てにしちゃうのよね」
「歴史上の人物?」
「もうしわけございません。私も彼女も長いこと異国の地で修行していたので中華の作法にはうとい田舎者でして」
「そういえば着ている服も変わっているな。たしか瀛州(えいしゅう)の陰陽塾とかで方術を学んだとか。まぁ、俗世より遠く離れていてはしかたあるまい。多少の無礼はゆるしてつかわす。それよりそのほうら二人にはいろいろと聞きたいことが山ほどある。さぁさぁ、もっとちこう」

 幼い皇帝は好奇心を隠しきれず、まことの呪術師に興味津々だった。
 君子は怪力乱神を語らずというが、秦の始皇帝を筆頭に時の権力者がこの手のマジカルな人たちを身近に置いて重用することは中国ではめずらしくない。
 たとえ
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