暁 〜小説投稿サイト〜
ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
シーホーク騒乱 3
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「……おい、ありゃあなんだ?」

 詰め所にいた港湾職員たちは外の光景に目を丸くした。板金鎧の集団が列を作って行進しているのだ。

「パレードがあるなんて聞いてないぞ」
「いったいどこの国の兵隊だ、ありゃ」
「どこってそりゃあ、アルザーノかレザリアだろ」
「あんな時代遅れの鎧着た兵士なんているかよ」
「じゃあなんだ、仮装行列か」
「ん? お、おいっ」

 鎧の兵士が振るった鉄拳によって通行人のひとりの頭が熟れたトマトのように叩き潰される姿を目撃し、口々に意見していた職員たちは凍りついた。

「な……」

 道行く人々に襲いかかる鎧たち。彼らは武器を持っていないが、重装鎧の籠手はそれ自体が金属製の鈍器に等しい。
 次々に撲殺していく。

「け、警備官だ。警備官を呼べ!」

 助けを求めようと外へ出た職員の顔面がザクロのように弾ける。板金鎧の兵士が詰め所の中にいる職員らを肉の塊にするのに三分もかからなかった。





 網の上に乗せたアワビとサザエが泡を吹いて焼けていくのを秋芳が至福の表情で見つめている。
 
「ありがたい、ありがたい。こんな上等な海の幸が安値で手に入るんだから港町は最高だ」
「なにやら香ばしい匂いがすると思ったら、こんな場所で朝餉かね」

 こんな場所。ナーブレス邸の庭の片隅で浜焼きをしている秋芳にマスターソンが声をかける。

「これはマスターソンさん、おはようございます」
「きみはこの前もただの魚の塩焼きを美味しそうに食べていたね。フライでもムニエルでも、ナーブレス家に仕える使用人ならもっと手の込んだ料理を味わえるはずだが、よほど粗食が好きなのかね」
「とんでもない、日本人にとってはこれがごちそうなんです」
「日本人というのはずいぶん粗食なんだねぇ。――ん?」

 買い出しに出ていたミーアが大慌てで帰ってくるなり、正門である大きな鉄柵の扉と、その横の通用門にもあわただしく施錠している。

「いったいなにごとかね。戸締りするには早すぎないかい」
「鎧を着た集団が街で暴れてるんです! 警備官の人たちが早く安全な場所へ避難するようにって、だから――」
「……その鎧を着た集団というのは、ああいう連中のことかい」
「え?」

 マスターソンが指さす先、施錠したばかりの鉄柵扉の前を板金鎧の一団が通り過ぎていく。
 そのうちの何人かが足を止め、鉄柵に突進してきた。

「あ、あああっ、そうです! あの人たちです! あの人たちが街で大暴れしていて――」

 耳をつんざく金属音にミーアの声がかき消される。
 鉄柵扉を強引に突破した板金鎧たちが殺到してくる。

「招かれざる客には、お引き取り願いましょう」

 狼藉者たちの前に立ちふさがったマスターソンが
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ