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東京レイヴンズ 異符録 俺の京子がメインヒロイン!
巫女学科
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ちがいますよ! なんでここで老け役があたり役だった女優さんの名前が出てくるんですか! どこにキスしたらいいか聞いてるんです」
「どこがいい、笑狸?」
「え? ボクが決めていいの?」
「いいよ、おまえがキスされるんだからな」
「なにそれ! ボクを実験台にするつもり?」
「実験台とは人聞きが悪い。なんかあった場合、俺なら対処できるがおまえにはそういうスキルないだろう。だからさ」
「んもー、しょうがないなぁ……。じゃあ、おでこにしてくれる?」

 もとより好奇心旺盛な性質な笑狸はあっさりと承諾し、手で前髪を上げてひたいをつき出した。

「それじゃあ、い、いきますからね」

 桃矢の桜色をした唇がかすかに笑狸の肌にかすかに触れる、小鳥がついばむような軽い口づけ。

(あー、富士野さんや木府さんが見たら喜ぶだろうなぁ)

 男子寮の寮母、富士野真子と女子寮の寮母、木府亜子は男性同士の恋愛に心ときめく趣味の持ち主で、よく寮生たちで妄想して楽しんでいる。
 と、その時。光が満ち、笑狸と桃矢。二人が一人になった。
 光に包まれ、それが消え去った時、『笑狸』のまわりを三体の影が飛び交っていた。半透明の影たちは『桃矢』を中心として、渦巻くように高速で飛んでいる。まるで嵐の中だ。音も光もさえぎられ、部屋の様子もわからない。
 桃矢はとまどっていた。いったいなにごとが起きたのか、こんなのは始めてだ。理解できない。
 笑狸は飛び交う影になつかしさと心強さを感じた。
 あれこそは、あの影こそは偉大なる隠神刑部。八百八狸を統率する大剛の大将。
 あの影こそは義気義侠に満ちた団三郎狸。弱きを助け強きをくじく佐渡の豪傑。
 あの影こそは屋島の太三郎狸。はるか昔、とある狸が矢傷で死にかけたところを平重盛に助けられ、その恩義から平家の守護を誓うもかなわなかった。だが、その代わりに後世においてその子孫が日の本の存亡を賭けた戦争で活躍した。その一族の長。
 大いなる祖霊の力が流れ込んでくる――。

「……笑狸、か?」

 秋芳の眼前に長髪の若者が姿を現した。その身にまとう気はたしかに笑狸のもの。だがその容貌は大きく異なる。
 漆黒の長髪、金色に輝く瞳、白い牙、銀色の爪、赤い舌、とがった耳と太い尾……。
 妖美なる化生がそこにいた。

「賀茂秋芳……。おまえを、食う」

 そのあやかしは美しい声色で物騒なことを告げ、秋芳に襲いかかった。
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