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星雲特警ヘイデリオン
第2話 叛逆の逃避行
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いが、トドメを刺すこともできず睨めっこ。……お前らしいな」

 その瞬間、母を奪われたシルディアス星人の少女は声にならない悲鳴を上げ、教え子は悲痛な声を漏らす。
 敢えてそれに耳を貸さず、ユアルクは母の骸を揺さぶる少女に、銃口を向けた。

「……どうしても殺さねばならないんですか。この子1人が生きていたとして、何ができるって言うんですか!」
「少女だろうと子供だろうと、関係ない。全宇宙を震撼させたシルディアス星人が生きている――それが問題なんだ」

 ――数分前、メイセルドから通信が入っていた。
 難民キャンプ周辺のシルディアス星人は殲滅した。残りの反応は、この近辺のみであると。

 つまるところ、シルディアス星人の生き残りはこの少女1人ということになる。
 確かに教え子が言う通り、彼女1人が生き延びたところで、抹殺に躍起になる必要はないだろう。母親を殺されても怒るどころか、前よりひどく怯えているところを見る限り、好戦的な性格でもない。
 恐らくは破壊衝動より理性の方が優っている、稀有な個体なのだろう。

 ――が、それでは終われないのだ。シルディアス星人の血が絶えていない。その事実は、力無き人々を怯えさせるには十分過ぎる重さなのだ。
 例え彼女自身は無害であるとしても、その子孫がそうであるという保証はない。彼女が生きているというだけで、人々は不安に晒され続けることになる。
 可能性が存在することさえ、許されないのだ。ゆえにその芽を完全に摘み取り、より確実な平和を手にするしかないのである。

 ――それが星雲連邦警察の決断である以上、星雲特警である自分達は従うしかない。そう言い放つように、ユアルクは引き金に指を掛ける。

「……やめて、やめてください! もう、もうこんなことする必要、ないじゃないですか!」
「ヘイデリオン。今まで、よくやってくれた。よく頑張った。もうお前が手を汚す必要はない。背を向けて耳を塞ぎ、隊長の元へ走れ。それで、全てが終わる」
「や、やめて……やめてください……! 戦いなら、もう、終わったんだ!」

 その光景に――少女は怯えきった表情で声にならない悲鳴を上げ、教え子はフルフェイスの仮面の下で嗚咽を漏らす。だが、ユアルクはそれでも止まらない。
 いたずらに苦しめることなく、確実に死を齎すため。僅かなブレもなく、照準を少女の眉間に向ける。

「やめ、て、くれッ……! この子の命だって、オレ達と同じ、命なんだ……!」
「さらばだ。……せめて生まれ変わった先で、幸せになってくれ」

 そして教え子の痛みを汲み、少女の幸せを願いながらも――引き金を、引いた。

「――やめろぉぉおぉおッ!」

 その瞬間、だった。

 教え子は一瞬にして光刃の剣を引き抜き、逆袈裟に振るう。
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