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キコ族の少女
第29話「ユイとスクワラとエリザと……3」
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表情で何考えてるか分かるわよ」
「ひあっ!?」


 いつのまにか隣に移動して目線を合わせるように屈んだエルザが、こちらを覗き込みながら苦笑しつつ声をかけてきたので、思わず喉の奥から変な声が出てしまう。
 そして、俺の動揺が反映したのかヒスイたちの動きが鈍ったことで約半数が犬達に捕まり砕け散る。

 戦うためではなかったとはいえ自動操縦(オートパイロット)や視界共有などの能力を付与した為に少し多めにオーラを込めていたのが災いした。
 一度に半数が失われれば失血量はそれなりになるので、必然的に貧血からくる立ち眩みと軽い脱力感から崩れ落ちるように座り込んでしまい。同時に生き残っていたヒスイが霧散して、それらを追っていた犬達が驚いたり混乱したりと少し周囲が騒がしくなる。


「え?ちょっと、大丈夫!?」
「だ、大丈夫……です」
「嬢ちゃん!?」


 突然の俺の急変に、エルザが座っているのも苦しくて倒れそうになる俺の体を慌てて支えてくれながら、心配そうに声を掛けてくれる。
 大丈夫だと答えようとしても息苦しさから強がりにしか聞こえず、実際に冷や汗が出てきたりして時間経過と主に症状が重くなっていく。
 ポケットに入っている造血剤へと手を伸ばそうとするが、医師からの安易な使用は厳禁という言葉と、自分の弱点が知られることになるという事から躊躇してしまう。

 そんな葛藤している俺を、後ろから駆け寄ってきたスクワラが自然に抱きかかえると、いつの間に来たのかエルザと同じ格好をした女性が数人いて、そのうちの一人が先導するかのように俺達を案内し始めた。
 エルザの方にも似た格好の人が近づいて、「貴方はこっちよ」と別の場所へと案内されていくのが、スクワラに抱えられながらも通路に入るまで見えていた。

 そして、朦朧として抱えられるがままの俺の周囲はあれよあれよという間に変化していき……


「貧血持ちなら、最初からそう言ってくれ」
「すみません」


 一般サイズ―――幼女サイズの俺にとってはビックサイズ―――のベットに寝かされている俺は、隣で椅子に座って盛大な溜息をつくスクワラに謝罪していた。
 ちなみに、テトは俺がぶっ倒れることの多さに慣れたのか最初の時は心配そうにしていたが、今は枕横で丸くなりながら寝息を立てている……まあ、耳が立っているので完全に寝入ってはいないようだけどね。

 この部屋に運び込まれて、すぐに訪れた専属医師のような女性から貧血だと診断された俺は、とっさに「よく貧血になるんです」という設定を作り出して“念の制約”についての隠ぺいを図った。
 エミリアは俺の入院理由を「違法薬物の多用による副作用」だと思っているようなので、そこを理解しつつ“貧血”という設定を組み込むことは難しい事ではない。
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