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キコ族の少女
第21話「腕試し-2」
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凝”を行いつつ彼女を注視しているのに見失うという状況は、俺に十分すぎるほどの焦りを与えている。俺の動体視力は未熟なのか、エミリアが速過ぎるのか、若しくは物理的に消えているのか、どちらにせよ見失うという事は、相手に奇襲するための準備を与えていることで、俺は必殺が込められた奇襲攻撃を十全な備えができないまま攻撃を受けなければならない。察知しようにも、素性を隠すためのコートとフードのせいで五感の一部を封じている縛りプレイという自業自得な状態。
 となると、俺の取れる手はレーダー用として“円”を発動しているヒスイを周囲に展開されるしかない。感覚的には、潜水艦を探す駆逐艦みたいなものだ。

 だが、ヒスイのレーダー網にエミリアがかかることはなく。代わりに、後ろでボコンッと最近聞いたことがある空気の音が耳に届いた。
 瞬時に、右目の“凝”を“切り替え”て、周囲に展開させているヒスイから後ろを警戒してる子と視界を共有し、後ろを向くことなく後方の状況を確認しつつ、全速力で前に向かって駆けだす。

 案の定、音の正体はリング状の石畳が剥がされた音であり、それに向かってエミリアが腕を振りかぶっているところであった。
 そして次の瞬間には、攻撃を受けた石畳がダメージに耐え切れずに砕け散ったのだが、更にそこから“風”を利用したのか四方八方へと散らばるはずの石の破片が、まるで俺向かって吸い込まれるかのように迫ってくる。

 音がしたと同時に走り出したとはいえ、向かってくる破片の方が速く、すぐ後ろまで迫ってきた。
 だが数舜の時を稼ぐことができたので、追撃に備えて顕現させていたヒスイ3体を俺と破片の間に移動させて、必要最低限の破片だけを粉砕させながら残りを回避していく。
 当然、破片を隠れ蓑として迫ってきたエミリアが一撃を与えんと、俺が回避した為ということで故意に生み出された隙を突くように拳を放ってきた。


「とっ―――」
「甘いよ。ユイちゃん!」
「……っ!」


 彼女の攻撃を往なしてからの反撃を目論んでいたが、エミリアの最初の攻撃は陽動であり、俺が合気道のように腕を払いのけても態勢を崩すことなく、逆に往なすことで生まれてしまった正真正銘の隙を突かれて肉薄されてしまう。
 身体能力はエミリアに分があるのは分かりきっているが、ここで下手に距離を取ろうとすれば先の戦闘の吹き飛ばされる原因になった衝撃波を伴った攻撃を受けてしまい、既に貧血と内臓ダメージでボロボロの体では耐え切れない。
 自爆覚悟で粉砕処理をしているヒスイをエミリアの死角から攻撃する手もあるが、彼女は俺を盾にするように立ち回っていたようで、粉砕処理を辞めてしまえば残りの破片が俺を襲ってくるだろう。一つ二つなら痛みを我慢できるだろうが、10、20、30……耐えきれるかもしれないが、
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