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Darkness spirits Online
第10話 宝剣の片割れ
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(……!)

 その事象と、こちらを窺うように目を細めるオーヴェルを前に。Rは、彼が持つ他のNPCとの「違い」を明確に意識する。

(まさか、あの人は……ッ!)

 彼がその「違い」を解き明かすために立ち上がった、その時。
 賞金稼ぎの一人――ダイナグが、あの火の銃弾を放つ拳銃を、腰のホルスターから引き抜いた。

「その前に、あの二人を始末しておけ」
「あいよ」

 一切の感情を持たない声色で交わされたそのやり取りを合図に、その銃口がネクサリーと脚を撃たれて動けずにいるテイガートに向けられる。

「信太……やめろッ!」
「……させませんッ!」

 テイガートを置いて避けるわけにはいかない。
 Rとネクサリーは決死の覚悟で剣を抜き、防御の姿勢を取る。

「やれやれ……相変わらず、甘いなヒカル」

 そんな彼らに呆れた様子で、賞金稼ぎはそのまま――引き金を引いた。

「ハァッ!」

 しかし。放たれた火炎弾が、R達の命を絶つことはなかった。

 凛とした掛け声がこの場に響き渡り、同時にジュウッと火が燃え尽きる音がする。

「――!?」

 目の前で起きたことに、今度はオーヴェルも含めた全員が目を見開いた。
 物陰に身を隠して混乱から逃れていたマクセルとコスモアも、驚きのあまり身を乗り出す。

「……『宝剣』の持ち主だろうと、こんなことは絶対に許さない! ここでアンタ達をやっつけて、汚名返上よ!」

 火の弾丸を手刀で叩き落とし、ユリアヌ・リデル・イリアルダは勇ましく、オーヴェル達の前で啖呵を切る。ドレスの裾を勢いよく破り捨て、動き易い格好に変えながら。

「ユ、ユリアヌ様! お怪我は!?」
「大丈夫よ、ネクサリー。それにテイガート、ヒカル君。今ここで……助けてくれた恩に報いさせて。ここはアタシに任せて、ネクサリーはテイガートをお願い!」

 ネクサリーの前で拳を握りしめ、ユリアヌはキッと賞金稼ぎ達を睨みつける。その視線のまま、彼女は隣で身構えているRに声を掛けた。

「ヒカル君。こんなことになっちゃって、ごめん。アタシ達のことはいいから、早く逃げて……って言いたいけど……連中、一人も逃さないつもりみたいだし」
「……そう、だな」
「だから、今度こそ。絶対に皆に償ってみせる、皆を守ってみせる! アタシはオーヴェルをなんとかするから、ヒカル君はあいつらをお願いッ!」

 そして義憤に拳を震わせ、勇ましく一歩を踏み出していく。そんな彼女を一瞥しつつ、Rは予期せぬ展開で迎えることになった「ボス戦」に臨むことになったのだが。

(……信太、俊史……)

 その手に握られた剣には――少なからず。迷いが、滲んでいた。

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