暁 〜小説投稿サイト〜
Darkness spirits Online
第10話 宝剣の片割れ
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
イガートを守るように立っていたネクサリーは彼を連れてかわすことも出来ず、顔を腕で覆って衝撃に備えることしかできなかった。
 それを目撃したRは反射的に飛び出し、二人を抱えて横に回避する。三人が立っていた場所に鉄球が減り込んだのは、その直後だった。

「ヒ、ヒカルさんっ!」
「ぐっ……ま、まさか、貴様に助けられるとはな」

 ネクサリーとテイガートは、間一髪自分達を救出したRに声を掛ける。

「この鉄球……嘘だろ……!」

 だが、当のRは返事をする余裕もなく――信じられないものを見る表情で、シャンデリアにいる男と床に減り込んだ鉄球を、交互に見やっていた。

 シャンデリアから火球を撃ち込んできた男。この鉄球の持ち主。どちらも――Rがよく知る人物だったのだ。

「……信太! 俊史ッ!」

 Rの悲痛な叫びと共に。
 鋼鉄の球体が、割れた窓から入り込んできた小太りの男の手元に引き寄せられる。

「ビビりすぎて動けなかったのかねっ? 今の仲間がこの程度じゃあ、ヒカルも大変なんだねっ」

 ドスの効いた低い声に、特徴的な語尾。ネクサリーはまさかと思って目を見開くと、

「ローグマンにグローチア。手間を掛けさせたな」
「後味悪いが、これも『依頼』だしな。やることはやるさ」
「ヒカルには悪いけど、これも仕事なんだねっ」

 そこには――スフィメラの町を拠点とする、二人の賞金稼ぎが立っていた。

「しっかし、ホントに弱っちいなこいつら。よく今まで盗賊に潰されなかったもんだ」
「仕方ないんだねっ。何せ当主様が小さな町でしか武術大会も満足に開けないくらいの超貧乏貴族様なんだからねっ」
「さぁ……まずはここを焼き払い、残る『宝剣』を探すとしようか」

 オーヴェルが無感情に放った一言に、ネクサリーの表情が凍り付く。そしてRは――わなわなと身を震わせていた。

(……オーヴェルとの「宝剣」を賭けた闘いは、マクセルが主催する御前試合で決着を付ける筋書きだったはず。こんな場所でいきなり戦闘になるなんて……ましてや、ダイナグとノアラグンが、敵になるなんて!)

 自分が知る「DSO」では、考えられない展開であった。

 確かにダイナグやノアラグンの「キャラ」を鑑みれば、賞金稼ぎの流儀に則り雇い主側に付くことは不思議ではない。だが、その雇い主がよりによって「ボスキャラ」のオーヴェルになる事態など、全く想定していなかった。

 ダイナグとノアラグンは、実力は確かだがスフィメラの町で特に名が知れている凄腕、というわけではない。狙って(・・・)雇わなければ、このような状況にはならないだろう。

 ――そう。

 オーヴェル自身が、「この世界の物語」を知っていなければ、そうそう起こり得ない事態だった。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ