暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
翔希
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ると、再び俺はこの妖精境へと足を踏み入れることを許されたのだ。レプラコーンの首都でまず見たものは鏡であり、今までのアバターとは似ても似つかないその外見に苦笑しながらも、ひとまずは気に入らないものでなかったことに安堵する。

 レプラコーン初期アバター特有の銀髪とはまるで不釣り合いな褐色肌に、鍛冶職人をイメージしたのか筋肉質な身体と、人を睨み付けているような切れ長な表情。そんな味気ない銀髪は、大体のレプラコーンにはレインのように、すぐに染められてしまうのが常で。筋肉質といっても初期アバターの筋力値などたかが知れていて、切れ長な表情など客商売では邪魔でしかない、と。なかなかに不遇な要素が詰まったアバターでもあったけれど。

「さて、と……」

 とはいえアバターを変えるためにデータの削除を繰り返すような気もなく、そんなアバターを二度見しながらも翼を展開する。浮遊城での経験がなくなったアバターは相応に重かったものの、少しすれば慣れるだろうと軽く受け止めながら、レプラコーンの首都から天空にそびえる浮遊城へと向かっていく。飛翔速度も以前とは悪い意味で比較にもならず、初期装備のために空中を飛翔するモンスターにも対応できず、モンスターから隠れながらゆっくりと浮遊城へ進んでいく。

 ……そんなことが少し、楽しかった。何でもないモンスターから全力で隠れて、見つかれば命がけで飛翔して、雲や浮き島で難を逃れればそこに巣くう別のモンスターに襲われて。そんなやってられない状況から逃げ出すために、またもや飛翔して風を身体に浴びるのが楽しかった。飛翔するのと同時に俺に絡み付いていたしがらみから解き放たれるようで、珍しくも笑みを隠しきれないまま空を駆ける。

 そうしてほうほうの体ながらも笑顔で浮遊城――正確には、浮遊城の一歩手前である《イグドラシル・シティ》へと降り立った。ある程度までは各妖精が所属する領で鍛えるため、周りには自分のような初期アバターはおらず、入り口にいたプレイヤーも多少ながら好機の目でこちらを見てきていた。そしてすぐにボロボロの身体に貧弱な装備を見て、無理やり飛翔して来た初心者かと判断したらしかったが、絡まれる前に素早く町の雑踏へと走っていく。何の話だろうと厄介事に巻き込まれてはたまったものではないと、勝手知ったる《イグドラシル・シティ》の目的地へ向かっていった。

 そうしてあの浮遊城で言うところの《圏内》に入ったことにより、ボロボロだったアバターはみるみるうちに回復していくが、それに反比例するように表情は笑みから仏頂面となっていく。先程まで感じていた解放感が嘘のように消えて、街頭を歩く速度も途端に遅くなっていて、新しいアバターの髪もガリガリと掻く癖の犠牲となる。とにかく気が重くなって意識が全て思考に支配されるが、目的地までは目をつぶっていよ
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