第1話 流星と博物館
[1/3]
[1]次 最後 [2]次話
宇宙という暗黒の大海原。その中を翔ける光の玉が、二つ。
赤い玉が青い玉を追い、この虚空を駆け抜けていた。
『待てッ……待ちやがれッ!』
蒼く美しい星を目指し、青い玉は唸りを上げて突き進む。その後に続く赤い玉は、血気盛んな叫び声を上げていた。
だが、青い玉がそれを聞き入れることはなく――彼の者はただ真っ直ぐに、目的の星だけを目指す。
『くっ……そぉお! 認めさせてやる……! 絶対、認めさせてやるんだァッ……! たとえ、あの鎧がなくたってッ……!』
赤い玉は、それに追いつけず。徐々に、距離を引き離されつつあった。
小惑星帯を抜け、隕石をかわし、なお執拗に青い玉をつけ狙う彼は――焦燥を露わに、この宇宙を翔ける。
彼らが、私達の星に辿り着くのは、時間の問題だろう。私達が暮らす、この美しい緑の星――地球に。
◇
「はぁー……やっぱ壮観だよなぁ、こうして見てみると」
ショーケースに並べられた、歴代のウルトラ戦士の立像。雄々しく立ち並ぶ、その像の群れを前にして――風祭弓弦は嘆息していた。
今年で創立100周年を迎えるという、このウルトラ記念博物館には、かつて地球の危機に立ち向かったと言われる伝説の巨人――「ウルトラマン」の歴史が刻まれている。
6年前に地球に訪れた「ウルトラウーマンジャンヌ」のことも、しっかりとここには記録されていた。
今日、弓弦達城南大学付属高校の生徒達は、このウルトラ記念博物館の見学に来ているのだ。
今年から高校に入学したばかりで、初々しくブレザーに袖を通している黒髪の少年は、穏やかな面持ちで立像を眺めている。
……昔から何かとぽけーっとしている彼は、天然キャラとして扱われることが多い。本人としてはそんなつもりはないのだが、今ではすっかりクラスメートからもそういう扱いを受けてしまっている。
今も、他のクラスメート達があちこち見て回っている最中だというのに、彼だけはぼんやりと立像を眺めている、という始末なのだ。良くも悪くもマイペース、という少年なのである。
――だが、世の中何が起こるかわからないもので。そんな彼に想いを寄せる、奇特な女子もいた。
遠くから彼に熱い視線を送る彼女の隣で、もう一人の少女がため息をついている。
「ねぇ……梨々子。今更だけどさ、あいつのどこがいいわけ? あんな何考えてんだかわかんないような奴」
「そ、そんなこと言わないでよ。……と、とにかく今日が勝負なんだから。頑張れ、私!」
「はぁ……あんたの趣味はよくわかんないなぁ」
艶やかな茶髪をポニーテールに纏めた、スポーツ系の少女――尾瀬智花。その親友であり、付属高校の
[1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ