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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第173話 古き友
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時間稼ぎをする心算だと思われるのだが……。

「第一に真名を使った召喚ならば、その召喚はどんな状況であろうと絶対に失敗する事はない」

 それぐらいに真名とは重要な物。故に、魔法の世界に生きる存在は簡単に他者に対して本名を名乗ってはならない……と言う事となる。
 もし、うかつにも敵に自らの真名を知られたとすると、それはその相手に生殺与奪の権を完全に与えて仕舞う事となるのだから。

「第二に、その召喚しようとする存在と魂の深い部分で繋がっている」

 これから呼び出そうとする荒御霊はこの例に当て嵌まる相手。俺に取って、それこそ奴は古い、古い友人。何回前の人生で関わったのか分からないぐらいに古い前世の記憶に登場する友人。
 奴との盟約が未だ続いているのなら、俺が呼べば奴は間違いなくやって来る。

 そして――

【タバサ、湖の乙女】

 これから呼び出す相手は非常に危険な相手。おそらく、オマエさんたち二人でもその存在が顕われた瞬間を瞳に映して仕舞えば精神に強力な侵食が行われる。
 クトゥルフの邪神が顕われても平然としていた二人に対して、普通では考えられないような事を言い含める俺。もっとも、これを始めに言って置かないと、後々に悔やんでも悔やみ切れない事が起きる可能性が非常に高いので……。

【念話で俺が良いと言うまで目を閉じ、耳を押さえて置いて欲しい】

 魔法など消し飛ばし兼ねない危険な相手である以上、魔法や、某かの超科学的な方法で外界との関わりを断つよりも、自ら眼を閉じ、耳を塞ぐ方がより効果が高い……はず。それぐらい常識の埒外の相手を召喚する心算なのだから。
 これから呼び出す相手には意志の力が大きく作用するはずだから。

 懇願、とまでは行かなくとも、かなり強い気配を滲ませながら【念話】を送り終える俺。
 そして――

「な、なんだ、貴様ら?」

 更に一歩、後ろに下がりながらそう言う匿名希望のチンチクリン。その言葉にはかなり大きな困惑と言う色と、そして、僅かながらの暗い好意と言う色が見える。
 まぁ、突然、俺以外の二人の少女が瞳を硬く閉じ、更に両手で耳を覆えば多少困惑したとしても不思議ではない。もうひとつの暗い好意の方は、彼女らの奇妙な行為によって更に時間が稼げ、何時かは行使し続けているエンハンスト系……アンプ技能の術が効果を発揮して俺やタバサたちの能力を上回れる、と考えているのか、もしくは二人の少女の姿に何らかの善からぬ妄想を抱いたのか。
 いや、おそらく、その両方か。

 ゆっくりと後退を続けるチンチクリン。その行為により元々あった距離が終に五メートルにまで広がる。この距離は安全圏……とは言えないまでも、それでも咄嗟の場合に対処が可能だと思われるギリギリの距離。
 もっとも、俺に取って
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