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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十話 混迷
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が……、ブラウンシュバイク公爵家とリッテンハイム侯爵家では僅かにブラウンシュバイク公爵家の方が実力は上だ。お前が女帝となれば馬鹿どもがブラウンシュバイク公が不満を持っていると騒ぎだすだろう」

夫は遣る瀬無さそうな表情をしている。そしてまた一口水を飲んだ。
「それを恐れたのですか」
「場合によってはあのテロ事件も私が後ろで糸を引いていたなどと言い出しかねん。だからな、私がブラウンシュバイク公に譲る姿勢を見せる事でそれを防いだのだ。我らは協力しなければならん、周囲に隙を見せてはならんのだ」

言い聞かせるような口調だった。私が思う以上に帝国は不安定なのかもしれない、夫がそこまで配慮しなければならないとは……。
「お疲れでしょう、貴方」

私の労りに夫は少し照れたように笑みを浮かべた。髭を生やした夫が困ったような笑みを浮かべている。私はこの笑みが好きだ。
「ブラウンシュバイク公は女帝夫君として女帝陛下の統治を助ける事になる。私も内務尚書として女帝陛下を助ける事になった」

内務尚書? 国務尚書ではなく? 私の表情を見て夫が笑い声を上げた。私は考えていることがすぐ顔に出るらしい。
「内務省は警察、そして社会秩序維持局があるからな。思慮の足りない者に任せると訳も分からず平民達を弾圧しかねん。私も思慮深いという訳ではないが、他に任せられる人間がおらんのでな。ブラウンシュバイク公に是非にと頼まれた……、断れん……」

最後は溜息を吐いた。夫は本心からブラウンシュバイク公を助けようとしている。それほどまでに帝国の状況は良くない、そういう事なのだろう。妙な話だ、夫がブラウンシュバイク公を助けて内務尚書になるなど今まで考えたこともなかった、今でも半信半疑だ。

「一年前なら公と張り合ったのだがな、今の帝国ではそんな余裕は無い」
ぽつんと寂しそうな口調に胸を衝かれる様な思いがした。いつもなら“何を言っているのです!”と叱咤したかもしれない。夫は“そう言うな”と私を宥めただろう。でも今はとてもそんな気にはなれない、少しの間沈黙が落ちた……。

「ブラウンシュバイク公は改革を行うつもりだ。私もそれに協力する事になる」
驚いて夫を見た。夫は水の入ったグラスを見ている。
「大丈夫ですか、貴族達が反発するのでは?」
「反発するであろうな、だがこれ以上放置すれば帝国が崩壊しかねん」
夫がまた溜息を吐いた。

「軍がどうにもならん、聞いているか?」
「軍が? いえ聞いていませんが」
「兵達の士気が下がって戦える状態ではないそうだ」
「オフレッサーは何をしているのです! エーレンベルクは、シュタインホフは!」
私が怒りの声を上げると夫が笑い出した。

「貴方!」
「許せ、ようやくお前らしくなったと思ったのだ」
「まあ」
夫は
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