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強欲探偵インヴェスの事件簿
ドア越しの攻防
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!?」」

「ぴいっ!?」

 ミーアが話に割り込もうとしたら、ヒートアップしていた2人に睨まれた。苛立ちと殺気の籠められたその眼光は鋭く、下手すりゃビームが出るか石化するんじゃないかという迫力があった。もしも視線で人が死ぬなら、ミーアは今7回くらいは死んだ事だろう。蹲ってプルプルしている少女を睨み付ける大柄の男二人。どう見てもお巡りさんに通報されかねない。事案である。気まずくなったのか、ハリーとインヴェスは黙り込んだ。




「とりあえず、部屋片すから5分待て」

 インヴェスはそう言い残すと、再びドアを閉じた。ミーアがこっそり覗いた部屋は、『汚い』以外に表現のしようがなかった。その辺に転がる酒瓶と、ツマミが入っていたのだろう汚れた皿が散乱し、書類が山になって幾つかのタワーを建設していた。更には脱ぎ捨てられた衣服や女性物の下着なども散らかっていて、これが本当に5分で片付くのだろうか?とミーアは甚だ疑問だった。

「エロ本とかはちゃんと隠しとけよ?」

『うるせぇ、黙れ、殺すぞ』

 ハリーが茶々を入れるとしっかりと返事が返ってくる辺り、この二人が仲が良いのか悪いのか、解らなくなりそうだった。そしてきっかり5分後、

「お待たせしました、どうぞ中へ」

 先程とは違いしっかりと服を着たインヴェスが、ドアを開けて2人を中に通した。先程覗いた部屋の中は、見違える程に綺麗になっていた。インヴェスが普段腰掛けているのだろう執務机の前にフカフカそうなソファが向かい合って設置されており、その間にも高級そうなテーブルが置かれている。そして過去の調査資料だろうか、部屋の壁を埋め尽くすレベルで本やファイルのような物が置かれている。

「さて、お話を伺いましょう。さぁ掛けて下さい」

 インヴェスに促され、ソファに腰を下ろす2人。向かい合う形でインヴェスも腰を下ろした。ミーアはその時改めて、インヴェスの身に付けている服装に意識を向けた。

 何というか、キザな剣士が着こなしていそうな服にも見える。しかし曲がりなりにもハンターであるミーアでも、それがハンターが使う装備の形状に良く似ている事を知っていた。

『これって、守護者(ガーディアン)の制服?……でも、何でそれをインヴェスさんが』

 守護者、というのは冒険者ギルドの治安維持組織の名称である。荒くれ者の多い冒険者達、当然のように犯罪に手を染めたりする者もいる。そういった者達を捕縛したり、依頼人と冒険者の間でトラブルが起きた場合の仲裁役など、色々な仕事をしている……いわばギルドの尖兵なのだ。だがその実、黒い噂も絶える事は無く、ギルドの不都合な人間を消して回る暗殺組織だ、という話もミーアは聞いた事があった。

「何か、私の顔に付いていますか?お嬢さん」


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