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強欲探偵インヴェスの事件簿
ドア越しの攻防
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皮を被った悪魔……こちらが誠実に契約を履行すれば、その契約は果たされるのだ。契約至上主義者が悪魔の本質なのだから。



「お待たせしました……あれ?ハリーさんは何でそんなに不機嫌そうなんですか?」

「ハハハ、我が友ハリーが不機嫌なのはいつもの事ですよ。さて、お嬢さん……そろそろ報酬の話に移りましょうか」

 先程までのインヴェスとハリーのやり取りはあくまでもハリーとインヴェスの間の契約であり、インヴェスとミーアの間に交わされる調査依頼は別口の話なのだ。

「わ、私が今準備出来るお金は15万ゴッズが限界です!どうかこれで受けては頂けないでしょうか?」

「ふむ……」

 暫く顎に手を当て、思案するフリをするインヴェス。しかし、彼の腹は決まっている。

「お嬢さん……残念だか15万ゴッズではこの依頼は受ける事が出来ません」

「ええっ!?な、何で……」

「まずこの依頼、違法な誘拐組織や奴隷商と敵対する恐れがある。生憎と個人経営の我が事務所では限界があるのですよ」

「幾らあれば……受けて頂けますか?」

「知人に協力を求める為に、その報酬を加算して……最低50万。それで手を打ちましょう」

「ご、50万……」

 とてもではないが中堅ハンターの彼女に払える金額ではなかった。そもそもこの15万ゴッズという金額でさえ、彼女の使わなくなった装備や手元に置いておいた装備に使う予定の素材も全て売り払っての金額だったのだ。

「申し訳ありません。とてもではないですが払える金額ではないです。諦めます……」

 望みが絶たれた。失意のどん底に落ちるミーア。落ち込んだまま部屋を出ようとするミーアに、インヴェスが声をかける。

「待ちなさい、お嬢さん。50万を15万に値切る方法……ありますよ?」

「ほ、ほんとうですかっ!?」

「えぇ、これでも私は契約至上主義者でして。誠実な契約を結べる方になら100%真実しかお話ししません」

 甘い言葉で少女を罠に嵌めようと、悪魔が嗤う。

「それで、その方法はっ!?」

「ここではなんですから、部屋を変えましょう。ささ、こちらです」

 悪魔の計略で地獄に落ちようとしている少女。そこに間一髪、救いの手が差し伸べられた。

「待て、インヴェス」

「何かな?我が友ハリー」

「何故報酬の値切り交渉にベッドが必要になる?」

 少女に救いの手は確かに差し伸べられた。しかしその手は少々無遠慮であったようだ。
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