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強欲探偵インヴェスの事件簿
舞い込んだ依頼
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ばらにではあるが空いていた。しかもそれはつい先程空いた、という訳ではなく、目の前の少女が相席を求めてきた際には既に空いていたのをハリーは確認している。つまり、ハリーがこの席に座っているのを確認した上でここに座ろうとしたのだ。

「更に、自慢じゃないが俺は人に好かれるような顔立ちはしてない」

「そんな事ーー」

「客観的に見た場合の事実を述べたまでだ、フォローは要らん」

 ありません、と否定しようとした少女の言葉を遮りながらハリーはあくまでも事実を述べた。実際、子供には怯えられるし、他の冒険者達も近寄り難いのか席に着くと潮が引いていくようにハリーの周りには静寂が訪れる。しかしハリーも事実は事実として受け止めてはいるが、気にしているかいないかというのは別問題だったりする。顔に似合わずナイーブな彼は、意外と落ち込みやすいのだ。

「いや、あの、その、あううううう」

 ベラベラと用があるんじゃないかとハリーが判断した材料を並べ立てられ、アワアワしている少々。

「焦らなくてもいい。ゆっくりと落ち着いてから話すといいさ」

「はっ、はいぃ……」

 すーはーすーはー、と幾度か深呼吸をした少女は落ち着いたのか、意を決して話し始めた。

「ハリー=ウォルフガングさんですよね?お願いがあって来ました」





「お願い……お願いねぇ」

 嫌な予感がする、とハリーは直感した。何よりもその頼み事の言い回しに違和感を感じた。冒険者には『指名依頼』という制度が存在する。腕利きの冒険者や特殊な能力を持つ冒険者にしかこなせないような依頼を、依頼者が直々に指名して依頼を要請するのだ。当然ながら多忙な腕利きを指名するのだから、通常の依頼よりも支払われる金額は大きい。その分危険な依頼や難解な依頼だったりするだが。しかし彼女がさっき言った言葉は『お願い』。彼女も冒険者であるからして、指名依頼の存在は知っているハズだ。あえてその言葉を使わなかったという事は、依頼関連の話ではないという事になる。

「はい!実は、私の相方を探して欲しいんです。私立探偵を兼業しているハリーさんに……」

 自分の『お願い』を矢継ぎ早に語っていく少女。その暴走気味の少女を制し、落ち着かせるハリー。

「落ち着け、まだ俺は君の名前すら聞いてないぞ。まずは名乗るのが礼儀って物じゃないのか?」

「あ、はい。そうですね……すいません」

 そう言って落ち着いた彼女は、身の上を語り始めた。彼女の名はミサナディーア。知り合いからは略してミーアと呼ばれているらしい。彼女の生まれたエルフの部族にはしきたりがあり、一定の年齢になると故郷の森を出て他の人種の社会を学ばなければならないらしい。そこで彼女は同い年の幼馴染みであるリプロレーナ……通称リーナと
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