暁 〜小説投稿サイト〜
フロンティアを駆け抜けて
死線幽導
[2/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
だろう。腕の中のジェムも、戦いを見てぽつりと呟いた。

「初めて会ったときも、昨日の勝負も……本当は、私なんて簡単に勝てたのに負けてくれたのかな……」

 ジェムにとっては、それが一番苦しいことだろう。自分の心を奮い立たせ、あるいは敵になってしまっても叱咤激励してくれた人が本当は茶番を演じていただけだったと言われたのだから。まんまと騙された側であるアルカには何も言えない。そして数秒の沈黙の間にも、戦況は変化する。


「――『重力』」


 ヨノワールが両手を突き出し、放つのは上から押さえつけるのではなくブラックホールのような一点を中心に全てを吸い込む重力。『未来予知』によりボーマンダが『ハイパーボイス』を放つ直前に発動したそれはカイリューとボーマンダを一気に近づけカイリューの鼓膜を破壊した。カイリューが悲鳴を上げ耳を塞ぐ。

「ちっ……カイリュー、『羽休め』で回復だ!」
「既に君の声は届かない。シャンデラ、『煉獄』」
「ボーマンダ、カイリューを連れて逃げろ!」

 シャンデラの枝分かれした灯火が強くなった次の瞬間、地面から濃紫の火柱が上がる。ボーマンダはその前兆を見た上で回避しようとして一旦後ろに上がるフェイントを入れてから前に出る。枝分かれした腕の炎が一つ、二つ、三つ、四つと灯り、最後の頭の炎が燃えた瞬間、ボーマンダの飛ぶ方向に炎が吹きあがる予兆を感じドラコは反射的に叫ぶ。

「止まれボーマンダ!!」
「……本当にそれでいいのか?」
「っ……!!」

 ボーマンダはトレーナーの指示を信じ止まる。だがシャンデラの炎はそれを事前に見透かしたようにボーマンダの真下から炎を吹き上げた。ボーマンダが抱えていたカイリューが煉獄に焼かれ、飛ぶ力を失い地面に今度こそ墜落する。

(この私やボーマンダがフェイントに騙された? いや……)

 ポケモンバトルでのトレーナーの指示やお互いの戦略を読む行為は目で見て判断するだけでなくその前兆や相手の思考を読んで先に手を打たなければ間に合わない。ジェムとダイバもお互いの手を考えた上で指示を出していたのが良い例だ。それを誤れば、このような不利につながる。

「どうした? 君から挑んだ戦いだ。この程度で折れてもらってはこちらも困る」
「ふん……そんな気は毛頭ない。チルタリスの大いなる雲に導かれた翼を見るがいい!!」

 サファイアの挑発を迎え撃つようにチルタリスをメガシンカさせ、フィールドにメガボーマンダとメガチルタリスを並べる。同時に咆哮しボーマンダは台風のような風切り音を、チルタリスは天使のラッパのような壮麗な歌声を響かせた。飛行及びフェアリータイプとなった『ハイパーボイス』の二重奏が相手を襲う。

「二体とも『守る』だ」


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ