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魔術師ルー&ヴィー
第一章
XV
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スだけでなく、ウイツやヴィルベルト、はては女公爵でさえ顔を引き攣らせた。
 ダヴィッドは一応魔術師の端くれであり、この様な時こそ力を発揮してもらいたいものである。
「ダヴィッドさん…マルティナさんに言っちゃいますよ?」
「それだけはは勘弁して下さいよ!」
 ヴィルベルトの言葉に、ダヴィッドが素っ頓狂な声で返したため、その情けない声に皆は思わず吹き出してしまったのであった。それはルーファスやヴィルベルト、ウイツに女公爵だけでなく、ギルベルト兄弟やファルケル親子までもが思わず笑ってしまう程であった。
 つい先程まで敵として相対していたにも関わらず、何故か笑い合っているこの状況を自然だと感じたルーファスは、ふとファルケルへと視線を変えて言った。
「なぁ、ファルケル。お前はさ、ただ寂しかっただけだと俺は思う。だが、罪は償わねぇとなんねぇかんな。そいつばかりは俺にゃどうにもなんねぇからよ…。」
「解っている。死罪も覚悟している。」
 ファルケルがそう返した時、彼の母は女公爵の元へ歩み出て平伏して嘆願の声を上げた。
「公爵様、息子をこの老いぼれから奪わんで下され!生きてさえいれば罪を償い続けられましょうが、死してはそれすらも叶いませぬ!亡くなってしもうた者達にはとても顔向けなど出来ませぬが、どうか生かして償わせてやって下され!死罪にせねばならぬなら、この婆の命を差し出しますで、どうか寛大な裁きを!」
 必死に嘆願する母を見、ファルケルの顔は悲痛に歪んだ。そうして彼も女公爵の元へ歩み出で、地へ額をつける母の肩を静かに抱いて女公爵へと言った。
「母には何一つ罪は有りませぬ。我は御身の命を狙い、罪無き人々の命を奪い取った身。罰を受けるは我であって、他の者には何一つ罪は無いのです。バーネヴィッツ公、我は貴女の言葉に従います。」
 ファルケルはそう言うや、母の隣で地へと額をつけたのであった。
 そこで平伏しているファルケルは、先程まで言い訳を並べ立てていた男とは違っていた。
 命を差し出そうとしている母に、ファルケルはその愛の深さを目の当たりにしたのだ。母の慈愛が彼の頑なな魂を溶かし、目を覚まさせたのである。
 だが、そんな二人を前に女公爵は難しい顔をした。
 先ず、ファルケルは村一つ焼き払い、多くの村人を殺した。女公爵も従者の一人を殺されてもいるのである。たとえ妖魔が単独で行ったとはいえ、指示を出したのはファルケルで間違いはない。
 その上、兵を集めて国に弓を引いたのだから、妖魔の甘言に唆された…などとは言い訳にすらならないのである。その様な人物故、貴族院で裁判にかければ死罪は免れない。
 しかし、死罪にしたところで罪は贖い切ることなど出来ぬことも事実であり、かといってここで独断で決めては後々貴族院との間に禍根を残すことになりかねない。
 
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