暁 〜小説投稿サイト〜
魔術師ルー&ヴィー
第一章
XV
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
追える。な?」
 ヴィルベルトの問いにウイツがそう言ってルーファスに繋ぐと、ルーファスは先程とは打って変わって真面目な表情で答えた。
「ああ。だが、探査魔術を行使しなくても行き先に心当たりがある。」
「どこだ?」
 ルーファスの言葉に、女公爵は眉を潜めて問った。すると、ルーファスは直ぐに答えを返した。
「レヅィーヒの街だ。」
 その答えに、女公爵は驚愕の表情を見せて声を荒げた。
「ならん!あの街は先の戦の折りに廃墟となり果て、未だ妖魔の邪気に汚染されている。お前たちだけで行くと言うなら、私は止めねばならん!」
「叔母上。悪いんだが、その聖ニコラスのサファイアを貸してほしい。」
 女公爵の言葉に返すことなく、ルーファスは彼女にそう言った。それは止めても無駄だという意思表示であり、ここで議論する気は無いということである。
 しかし、女公爵が所持している聖ニコラスのサファイアとルーファスが父の侯爵より借り受けたラファエルの涙があれば、街一つの邪気などどうとでもなる筈であった。故に、女公爵は説得を諦め、着けていた腕輪を外してルーファスへと手渡したのである。
「良いか?くれぐれも無理はするな。お前に万が一のことがあれば、私はフェリックスになにをされるか分からんからな。」
「分かってる。必ず戻ってくるから、父にはその様に伝えてほしい。」
「分かった。しかし、お前もフェリックス同様、頑固だな。」
 女公爵が諦めた様に溜め息混じりにそう言うと、ルーファスは苦笑しつつそれに返した。
「誉め言葉として受け取っとく。」
 そうしてルーファスは受け取った腕輪を身に付け、後ろで待機しているヴィルベルトとウイツに「さ、行くぞ。」と言った。
「はい、師匠。」
「さっさと片付けて戻らんとな。」
 ヴィルベルトとウイツはそう言うや、女公爵へと礼を取ってルーファスの後に続いたのであった。
 日は傾き、直ぐそこに夜の闇が迫っていた。女公爵は三人の後ろ姿を見ながら「必ず戻るのだぞ。」と、一人呟いた。それは願いであり、また祈りのようであり、誰にも届かぬその言葉は、夕の朱にそよぐ風に霧散した。




[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ