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魔術師ルー&ヴィー
第一章
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 ルーファスらはその後、村を出て更に先へと歩みを進めた。
 あの村人達であるが、ルーファスがミストデモンの毒に冒された男たちを救ったことと、焼けた家々を魔術で復元したことで掌を返す様に友好的となった。そのため、ルーファスらが出発する際には水と食料すら用意して送り出したのであった。
 その村を出て数日後のこと。
「あれか…。」
 ルーファスらは遂に、目的地であるグリュネの村へと辿り着いたのであった。
 皆は直ぐに村の中へと足を踏み入れたが、そこには全く生活感が無かった。と言うより、そこに人の姿を見い出せなかったのである。
 その様な村をルーファスらは暫く歩いていたが、村の奥、丁度森の入り口付近に小さな教会を見つけ、皆はその中へと入った。
「誰か居るか?」
 ルーファスは入って直ぐに大声で言ってはみたものの、やはり答える者は居なかった。正直に言えば、最初から期待などしてはいなかったが…。
「師匠…誰も居ないみたいですね。」
「そうだな…。長い間使われてねぇみてぇだしな。」
 そこはよく見れば埃が積り、机や椅子もあちらこちら壊れている。祭壇さえ蜘蛛の巣がかかっている有り様であり、司祭が居なくなって久しいことが窺えた。
 ルーファスらは中を少しばかり歩くと、女公爵が何かに気付いて口を開いた。
「ここは…異教の教会ではないか…。」
「異教?」
 その言葉にヴィルベルトが首を傾げて返した。
「あの薔薇の浮き彫り…東の大陸にはあるが、この大陸にはないものだ。確か大地の女神を奉ずるもので、ヴァイス教とか言ったか…。」
「叔母上、何でんなこと知ってんだ?東の大陸にでも行ったことあんのか?」
 ルーファスは半眼になって問った。如何にもどうでも良いと言った風である。
「あるぞ。ほんの一年程な。先の戦の前だが。」
 それを聞くや、皆は目を丸くした。
 この時代、大陸間を往き来することは困難で、船旅でも行くだけで一年近く掛かる。途中で多くの島々に立ち寄り、時には船の修理で長い時を島で過ごすことにもなる。沈没することもあるため、かなり過酷な旅と言えるのである。その上、乗る船は商船しかなく、旅行者専用の船などない時代であった。
「叔母上…無茶し過ぎだっつぅの…。」
「昔の話だ。ま、良い勉強にはなったがな。お前も行ってみろ。あちらには魔術師は居ないからもてやされるやも知れんぞ?」
「遠慮しとく…。」
 ルーファスがそう溜め息混じりに返した時、奥の部屋から物音が聞こえたため、皆は体を強張らせた。
「誰だ!?」
 ウイツは問った。彼が一番近くに立っていたからである。
 暫く沈黙が続いたが、その後、奥の部屋から一人の青年が姿を見せた。
 青年がはっきりと姿を見せると、ルーファスは思わず声を上げた。
「お前…サリエスじゃねぇか!」

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