暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
食事の予定は……

[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「先生。ワシが昨日作った『夏祭り計画表』が真っ白けになっとるんだけど……」
「ほいほい?」

 ぷるぷると震えるコウサカさんにそう言われ、俺はコウサカさんと共に震えながら画面を見る。……なるほど。言われてみると、確かに真っ白けで、昨日俺と一緒に作った、夏祭りのタイムテーブル表の姿形がまったく見当たらない。これじゃただの白紙の紙だ。

「おかしいですね……俺も保存した瞬間を見てましたし……」
「そうだよねぇ……」

 コウサカさんは俺の方を、震えながら不思議そうな顔で見る。昨日、あれだけ苦労して表を仕上げ、四苦八苦しながら紙の右下隅っこに、三角形の『夏祭り抽選会参加券』を作ったコウサカさん。俺に対し、プルプルしながらも『いやぁ、苦労したけどもうすぐ完成ですなぁ!!』とうれしそうな笑顔を見せていたコウサカさん。そんなコウサカさんの笑顔も、今は見る影もなく、しょんぼりと落ち込んでいる。

 コウサカさんが、震える右手でマウスを操り、『夏祭り計画表』を保存した瞬間は俺も震えながら見ていた。確かにコウサカさんは常日頃プルプルと震えているが、その操作に間違いはなかった。

「んー?」

 もう一度、ファイルを開くダイアログを出してみる。そして『夏祭り計画表』の保存日時を確認してみた。

「……?」

 違和感がある。保存したのは昨日のはずだ。それなのに、保存した日時が今日……もっというと、つい3分前の時刻になっている。

「コウサカさん」
「はいはい?」

 おれは、コウサカさんが開いている、真っ白けになってしまった『夏祭り計画表』に、一行だけ『うおおおお』と文字を入力し、そのフォントサイズを最大に設定した。超巨大な『うおおおお』は、なんとも言えない存在感がある。その存在感あふれる『夏祭り計画表』を、俺は再度上書き保存した。

 今から俺とコウサカさんが行うのは、検証だ。

「一回Wordを閉じて、もう一度開いてみましょうか」
「はいー。でもなんで真っ白になったんだろう……?」

 コウサカさんは眉を八の字型にして、震えながらWordを立ち上げた。Wordが立ち上がるまでの間、震えながら画面を眺める、俺とコウサカさん。コウサカさんのメガネが、震えのため少しだけズレ始めていた。

 やがてWordが立ち上がった。コウサカさんは何食わぬ顔で新規の『白紙の文書』を選択し、何も入力されてない白紙の文書を開く。つづいて……。

「んじゃ、さっきの『夏祭り計画表』を開きますねー……」

 と震えながら宣言し、何の迷いもなく『名前をつけて保存』の項目を選択していた。そのまま保存ダイアログで『夏祭り計画表』をクリックし、そのまま『保存ボタン』を押す。

――上書き保存してよろしいですか?

「よく分からんけ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ