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大淀パソコンスクール
食事の予定は……

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ど、とりあえず……」

 コウサカさんはそういい、確認メッセージの内容をよく読まずに『はい』をクリックしていた。

「コウサカさん。理由がわかりました」
「そうなの?」
「はい。コウサカさん、『夏祭り計画表』を開くつもりで、この真っ白けの紙を『夏祭り計画表』の名前で保存しちゃったんですよ」
「へ?」

 コウサカさんは、見ての通り高齢だ。メガネもかけ、身体もプルプルと震えている。そのため画面がよく見えず、『開く』をクリックしたつもりで『名前をつけて保存』を選んでしまい、それで『夏祭り計画表』をクリックして選択してしまったんだろう。

 『名前をつけて保存』ダイアログが開いている時、表示されているファイルをクリックしてしまうと、ファイル名の項目にそれがセットされてしまう。そのままコウサカさんは。『開く』ボタンをクリックしたつもりで、『保存』ボタンを押してしまったようだ。結果、真っ白けの文書が『夏祭り計画表』で保存されてしまい、元々の『夏祭り計画表』は上書き保存されてしまった……きっとそれが、この真っ白け事件の真実なのだろう。

「ボタンをクリックしたときに、『上書き保存してよろしいですか?』て出たのは、気付いてました?」
「え? そんなの出たっけ?」
「ほら、途中でコウサカさん、『はい』か『いいえ』かの選択を迫られて、『はい』をクリックしてたじゃないですか」
「ぁあ……あれ、そんなことが書いてあったの?」
「そうなんです。読まずに『はい』をクリックしてたんですか?」
「だって、読んでも意味がよくわからないから……」

 ……これは、このパソコン教室で働くようになって気付いたのだが、初心者の人は、思った以上にパソコンからのメッセージを読まない。生徒さんの中でも、『はい』か『いいえ』かの選択を迫られただけで、パニックに陥って『せ、先生ッ!?』とヘルプミーする人が大半だ。

 パソコンに慣れてない人からしてみれば、確認メッセージが出ただけで、心臓を鷲掴みされたかのような恐怖感に襲われると、黄金糖のタムラさんが以前に言っていた気がする。

『先生たちは慣れてるからいいけど、私たちは『〇〇していいですか?』てパソコンに聞かれただけで、『ふぁぁぁああああ!?』て大騒ぎするんですよー。だって分からないから』
『メッセージを読んでる余裕なんてないです。『壊しちゃったのかも!?』って思っただけで、もう怖くて怖くて……』

 ……やがてその壁を乗り越えると、『よく分からんけど『はい』をクリックすれば、この意味不明なメッセージは消える』ということを覚え、出てきたメッセージはとりあえず『はい』をクリックして、消そうと試みる。

 ……そう、先ほどのコウサカさんのように。

 コウサカさんは、上書き保存の確認メッセージをまっ
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