暁 〜小説投稿サイト〜
大淀パソコンスクール
少しは妹を見習ったらどうだ?

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るのかもしれない。

「……」
「急ぎではないですし、生徒さんが少ない時に少しずつでいいんです。その分の報酬もお支払いしますし、ぜひやっていただきたいのですが」

 うーん……やること自体はやぶさかでない。確かに大淀さんやソラール先輩よりもデータベースを扱い慣れてる自信はある。

 でもだからといって、今回扱うのはAccessだ。俺はAccessでのソフト開発は経験がまったくない。そんな俺に出来るのか……? 大淀さんとソラール先輩が満足いく、今のものに匹敵する業務基幹ソフトが作成出来るのか……?

 ええいっ。ここで悩んでいても仕方がない。ここはもう見切り発車で行ってやるッ。

「急ぎではないんですね?」
「はい」
「俺はAccessをいじった経験がないので、勉強しながらになりますが、それでもいいですか?」
「もちろんです。お願いできますか?」
「わかりました。やるだけやってみます」
「本当ですか!? ありがとうございます!」

 俺が承諾を返事をした途端、大淀さんの表情が花開いたように、パアッと明るくなった。この笑顔を見られただけでも、OKした甲斐があると思える、本当に心からの笑顔だ。

 報酬も払ってくれるって話だし、急ぐ必要もないというのなら、勉強がてらやってみようか。それに、この人なら『まだ作ってないんですか?』『早く作って下さい』てな具合の、後になってから話が違う的ゴタゴタには陥らない気がした。この教室は、従業員に対してとても誠実なところがあるし。

 俺は、先ほどプリンターから排出された印刷物に再度目を向けた。データベースの設計もちゃんとあるし、具体的な追加機能の希望もきちんと記載されている。これなら、困るような事態にもならないはずだ。UIのデザインに関しては、みんなと相談しながら決めればいい。2人なら、喜んで相談に乗ってくれるはずだ。自分が使うものだしな。

「ではよろしくお願いします!」
「ええ。なんとかがんばってみます」

 加えて、ソラール先輩も大淀さんもあまりAccessが得意ではないと言うのなら、俺がもしこれでAccessを極めれば、この教室での俺の強みがひとつ出来ることになる。これは俺にとっても有益なはずだ。

 そうして俺が、新たな決意と共にAccessの参考書を戸棚から引っ張りだした時。『ゴウンゴウン』という重厚な音が事務所内に轟き、入り口のドアがゆっくりと開き始めた。慌てて入り口を振り返る俺。ついに来たか! 奴が来る時間となってしまったのか!?

「やー……!」

 時計を見ると、午後7時5分前……しまった! 大淀さんとの楽しいコミュニケーションに気を取られ、すでにこんな時間になっていたということに、気が付かなかったッ……!!

「まずいッ……奴が……」

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