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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第169話 落ちて来るのは?
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 もし、物見遊山の一環でこの場に居るのならどれだけ気が楽か。

 もっとも現状の俺の立場で、この台詞を口にする訳には行かないので……流石に軽く肩を竦めて見せるだけで、この場は答えと為す俺。
 そして、

「食事は終わられたのですか、ランスヴァル卿?」

 ……と問い掛けた。
 振り返った俺の後方に存在する野戦陣地……と言えば聞こえは良いが、高が数百人程度の兵数ではそれほど多くのテントも必要ではなく、更に言うと有刺鉄線や塹壕どころか柵すら設置していないここは、どう考えても男子校の行う野外宿泊訓練程度の印象しか与えられない場所と成っている。
 その少ないテントの間を、ここが中世ヨーロッパ風剣と魔法の世界の戦場。それも最前線と考えるのなら、あまりにも軽装過ぎる兵たちが忙しげに動き回っているのが分かる。

「早寝、早飯、早糞は兵の基本ですよ、王太子」

 流石に現状では食後にアルザス産のワインを一杯、と言う訳にも行きませんしな。
 何となくなのだが、ガハハと笑いながら口にするタイプの言葉を、妙に礼儀正しく返して来るランスヴァル卿。その彼にしたトコロで、温かさとは無縁。頑丈さと重さを強く感じさせるだけの金属製の防具の類は一切身に付けては居らず、近世フランスに存在した銃士隊に良く似た蒼を基調としたやや派手目の衣装で身を包んで居るだけで、ゴテゴテとした重い感じの鎧や甲で身を護ると言う訳ではない。
 しかし、柔らかな表情も僅かの間だけ。直ぐに真剣な表情となり、上空……低く垂れこめた黒い雲の遙か向こう側を見つめるランスヴァル卿。

 そして……。

「本当に落ちて来ると思いますか?」

 ……と、今目の前にいる歴戦の勇者に等しい外見を持つ騎士に相応しくない、妙に顰めた声で問い掛けて来た。
 誘われるように上空を仰ぎ見る俺。しかし、其処には雪を降らせるのであろうと言う黒い雲が存在するだけで、飛空船の姿はおろか、鳥の姿さえ存在していない。

 あの夜。このハルケギニア世界に再召喚された夜、タバサに因り告げられた内容。
 それは――

「聖スリーズの教えによると、遙か宇宙(そら)の彼方から小惑星を呼び寄せる術式は存在する、……と言う事なので」

 少し曖昧な物言いで答える俺。

 そう、今回落ちて来る可能性が高いのは彗星(魔狼フェンリル)などではなく、小惑星(炎神スルト)らしい。ただ、どう考えても真面な……。そう考え掛けて直ぐに心の中でのみその考えを否定する俺。そもそも常識の埒外に存在するが故に、魔法は魔法足り得ていると考えるのなら、こう言う非常識な術式こそが本当の意味で魔法と呼ぶべき代物なのかも知れない、そう考えたから。もっとも、確かにそうである可能性は高いかも知れないのだが、それでも今回の小惑星召喚用の術式
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