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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十一話 威
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「本当にそう思っているんです、何も分かっていないと」

ワイドボーンがむっとしているのが分かった。だがそれがどうした、怒っているのはこっちも同じだ。どいつもこいつも何も分かっていない。
「……言ってみろ、俺は何を分かっていない」

「帝国軍には二つの序列が有るんです。それが何か分かりますか?」
「……いや、分からない」
「一つは軍の序列、いわば階級です。そしてもう一つは宮廷序列、爵位や或いは有力者に繋がっているか……」
「……」
「軍での序列は低いが宮廷序列は高い、そんな連中が帝国には居るんです」

フレーゲル男爵がそうだ、軍では予備役少将……、言わばその他大勢の一人だ。だがミュッケンベルガーも彼を無視することは出来なかった。何故なら宮廷序列では男爵でありブラウンシュバイク公の甥でもあるからだ。極めて高い地位を持っている。

「そういう連中を指揮するんです。宇宙艦隊司令長官には“威”が必要なんです。宮廷序列を押さえて軍序列を守らせるだけの“威”が。それだけの“威”が無ければ大艦隊を指揮できない、帝国軍の上層部はそう考えている」

「……メルカッツ提督にはその“威”が無い。それは分かった、だが俺が聞いているのはビュコック提督の事だ」
「同じですよ、ビュコック提督にも“威”が無い」

俺の言葉にワイドボーンが顔を歪めた。
「何を言っている、ビュコック提督ほど兵の信望が厚い人は居ない、同じことを言ってやる。お前は何も分かっていない!」

「兵の信望は有るかもしれない、しかし将の信望はどうです」
「何?」
「宇宙艦隊司令長官は将の将です。ビュコック提督に将の将としての信望が有るかと聞いています」
「……」

「彼は士官学校を出ていない。周囲から用兵家として一目は置かれても各艦隊司令官が素直にその命令に従うと思いますか。従うのはウランフ提督、ボロディン提督ぐらいのものでしょう」

原作における第三次ティアマト会戦を思えばわかる。同盟軍第十一艦隊司令官ウィレム・ホーランド中将は先任であるビュコックの命令を無視、帝国軍に無謀な攻撃を仕掛け戦死した。

ホーランドだけの問題じゃない、ビュコックが会戦においてともに行動した指揮官を見るとウランフかボロディンがほとんどだ。おそらくは他の指揮官が嫌がったのではないかと考えている。実力は認める、宿将として尊敬もする。しかし士官学校を卒業していない奴に指揮などされたくない、そんなところだろう。

周囲が彼を司令長官として認めるのはおそらくは状況が悪化してどうにもならなくなってからだろう。原作で言えばアムリッツア以降だ。あの時点で宇宙艦隊司令長官など罰ゲームに近い。俺なら御免だ。

「ビュコック提督には周囲を抑えるだけの“威”が無いんです。否定できますか、ワイドボ
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