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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第十七話 雌伏
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は雪の話にしばらくの間ついていけなかった。韮山城を落とす準備に奔走していて、風魔小太郎の娘の名を忘れていた。そう言えば風魔小太郎の返事の期限だった。期限以内に返事が来たということは悪い返事じゃないだろう。

「殿にお目通りを願い出ています」
「そうか。奥の部屋に待たせておけ。私も準備が整ったら直ぐに行く」
「かしこまりました」

 俺が返事すると雪が立ち去る足音が聞こえた。俺はそそくさと準備を整え扉から出ると柳生宗章がその場に座っていた。俺の警護役である彼は何時も俺の側にいる。だから、俺の寝所の入り口で柱を背もたれにして眠っていた。柳生宗章は本当に律儀者だ。彼にはどうしても家臣になって欲しい。

「風魔小太郎の娘に会う。ついてきて貰えるか?」
「御意のままに」

 柳生宗章は短く返事すると立ち上がった。俺は彼を連れ夏の待つ部屋に向かった。





 俺が夏の待つ部屋に入ると夏が平伏したまま待っていた。部屋には雪と玄馬もいた。二人は俺の姿を確認すると俺に平伏した。
 かつての主人に義理立てか、それとも俺に仕えても心は風魔衆ということか。別に構わない。俺にとって役に立つなら使う。

「よく戻ったな」

 俺は夏に声をかけると上座に座った。柳生宗章は俺の左前に座り何時でも夏を斬れる位置に座った。ここまできて夏が俺を害すことはないだろうが、念のためということだろう。

「小出相模守様、お待たせして申し訳ございませんでした」
「夏、面を上げよ。早く風魔小太郎の返事を聞かせて貰えるか?」

 俺は単刀直入に夏に聞いた。彼女は顔をあげると俺のことを見た。そして、彼女は自分の懐から書状を取り出した。彼女は座ったまま俺の近くまで移動すると体勢を倒し書状を俺に差し出した。
 俺は柳生宗章に目配せする。彼は夏から書状を受け取り俺に差し出した。俺は柳生宗章から書状を受け取ると、それを開き中身を見た。風魔小太郎からの返事は俺の条件を全て飲むと書かれていた。山中城が落ちたことで風魔小太郎も悠長にことを構えている余裕が無くなったのだろう。

「夏、風魔衆は既に動いているのか?」
「既に仰せの通りに伊豆国内に風魔衆の者達を放っております。徳川と江川の間者は全て始末してご覧にいれます」

 夏は顔を上げ俺に風魔衆の動きを説明しはじめた。彼女の報告では既に徳川の間者を七人始末しているそうだ。だが、言うだけなら幾らでも嘘をつける。俺は伊豆国に地の理がない。だから、風魔衆が俺を騙すことは容易いだろう。疑りはじめたら際限にないな。

「私の期待通りに働いてくれているようだな」

 俺は淡々と夏に返事した。風魔衆が俺の指図通り動くことを確約し成果を上げているというなら、俺はそれを賞さなければならない。しかし、風魔衆が俺のために
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