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夢幻水滸伝
第五話 出雲へその十三

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「日本にある勢力のことは全部聞いたけどな」
「自分に合いそうな勢力はか」
「なかったからな、それでロシアの話を聞いたんやけど」
「自分に合いそうか」
「それでロシアに行こう思てるねん」
 日本を出て、というのだ。
「これからな」
「そうやったんか」
「敦賀辺りから船で行こうと思ってたけど」
「けど?」
「ここで会ったのも何かの縁、ちょっと一緒におってええか?」
「ちょっとか」
「自分これから戦争するんやろ」
 難波は笑みのまま中里に問うた。
「そやろ」
「ああ、出雲まで行くけどな」
「出雲の東の方にやけに柄の悪い連中おるな」
「その連中と戦をすることになりそうや」
「戦なあ」
 そう聞いてだ、難波は。
 今度はにたりと笑ってだ、こう言った。
「僕こっちの世界では戦好きやしな」
「そやからか」
「ああ、その戦の間だけでも一緒におらせてもらうわ」
 これが中里への返事だった。
「それでや」
「戦ってくれるか、一緒に」
「そうさせてもらうわ、ただな」
 ここでだ、中里は一旦笑みを消して中里に問うた。
「連中に降る使者とか送ったか?」
「今帰ってきましたけど」
 部将の一人、エルフの者が言ってきた。端整な初老のエルフだ。
「殺されかけて何とか」
「帰ってきたんやな」
「敵陣から空飛んで逃げて」
「空飛んでか」
「天狗族やったんで何とか出来ました」
 逃げることがというのだ。
「幸い」
「使者殺そうとするとかガチやな」
 中里は彼が知っている儀礼からその話を聞いて眉を顰めさせて言った。
「屑やな」
「まさに無法者の集まりです」
「そやな、そんな連中やとな」
「もうですな」
「戦うしかないな、やっぱり」
「民からも奪い壊し殺すですから」
「わかった、戦や」
 中里は最後の断を下した。
「連中徹底的に潰すで」
「そうしますか」
「よし、その戦の間は参戦させてもらうわ」
 笑顔でだ、難波はまた言ってきた。
「是非な」
「宜しゅう頼むで」
「戦は好きやが無法は好きやない」
 難波は彼の考えも述べた。
「思う存分やったろか」
「星の力でやな」
「ああ、この力見せたるで」
 こう言ってだ、難波は次の戦の時は中里達と共にいることを約束した。そして実際に彼は先陣を指揮することになった。
 中里はこれまで通り本陣にいた、そこで鵺にこう言った。
「残念やな」
「折角星の奴に会えたのにっていうんやな」
「そや、それで一時参加ってな」
「まあそれはな」
 鵺は自分の背に乗る中里に答えた。
「僕も同じ考えや」
「やっぱりそうか」
「ああ、折角日本で会えたのにな」
「ロシアに行くっちゅうから」
「残念や、しかもな」
 鵺は目を鋭くさせてこうも言った。
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